NY的心づけ | 我が麗しき君と摩天楼

我が麗しき君と摩天楼

沢田研二さんへの想いを胸に秘め、ニューヨークに14年滞在後2013年帰国。
変わり果てた日本で逞しく生きる日々。

普段の生活の中で、チップを払う、という習慣がある。

何かをサービスされた時に、請求金額とは別に心ばかりの”ありがとう”の気持ちとして相手に差し上げる現金である。
世界の各国各地でも、そうゆう習慣が全く無い所もあるかもしれないが、たいがいあるんじゃないだろうか。
中でもNY、特にマンハッタンはそのチップなるものに、結構な金額を要求される。はっきりいって、世界で一番高いと思われる。

ざっと考えると
レストランなどの飲食店全般、タクシー、美容院などのサロンなどあるが、

24時間ひっきりなしに、マンハッタンを縦に横に走りまくっているイェローキャブ。

わざわざ電話してタクシーを呼ぶよりも、ストリートを一歩出れば、手を挙げればすぐにつかまるし、荷物が多い時は、可能であればドアを開けてくれたり、トランクに荷物を入れてくれたりする。
”◯◯ストーリートまでお願い!”と一言言えばドライバーも慣れたもので、一瞬のうちにその日の交通事情、その時間帯の渋滞を換算し、一番の近道を短時間で行ってくれる。
だからへたに”そっちよりあっちの道を通ってほしい”など言った時には、”プロの俺様の言うことが聞けないのか”と言わんばかりに思い切りふてくされるのだ。
地下鉄の方が本数もあるし遥かに早く目的地に着く。
でもその目的地がびみょーに地下鉄の駅から遠くて、急いでる時、私はタクシーを使うのだが、”急いでるの!◯◯時までに着かないといけないのよ!どーにかなる?”って言うと、素晴らしいことにいつもどーにかしてくれる。
いくら無愛想でも、”ありがとー!助かったよぉ”と、チップも弾んでしまう。

美容院、ネイルサロンなども大変なお仕事で、それぞれの技術をそれなりに完璧にしつつお客さんとの会話、おもてなしが必要とされる。
私が行く家のお向かいのネイルサロンの親父は、日本人が好きなのか、かなり突っ込んだうざい話にもなるが、それも人柄。技術は確かだし、手足のマッサージもかなり気持ちよく、”もういい”と言うまで延々続けてくれる。
私のヘアースタイリストのこの方とはまだ浅いおつきあいだが、私の髪の癖を私より把握しており、” Kazuko 専用シークレットカット”というものをあみ出した達人恩人である。
通りすがりの人からも”美容院どこに行ってるの?”とよく聞かれる。
”メグー! いつもありがとー!”

チップと言えば飲食店、マンハッタンには何百というレストランやバーがあるが、ここではただならぬドラマが日夜繰り広げられている。
マンハッタンに居住されている人のほとんどの方が、週の半分以上は外食ではなかろうかというくらい、外食産業が発達している。私も仕事の都合で、週2日以上は外食である。

まずテーブルに着いてしばらくすると、サーバーと呼ばれるウェイター、ウェイトレスが近寄り、”私は◯◯と言います。このテーブルを担当します。宜しくお願いします。”となる時もあれば、”今日のお薦めは前菜が◯◯でメインは◯◯です。先にお飲物をお持ちしますが、何をお飲みになりますか?”となったりする。
高級なところになると、行ったことはないが、たぶんソムリエとかが出てくるんじゃないだろうか。

そうなのだ。レストランに行ってアルコール、前菜数品、メイン、デザートを順に静かに注文するのが本来のマナーで、サーバーが来る前から、手を挙げたり大声で”エクスキューズミー!”と呼ぶのは論外である。
若いサーバーでもプロはプロである。彼らなりに、”楽しい食事をしてほしい”と考えているのはわかる。

テーブルに着く前から注文しない。
注文したものが順に運ばれるときは、静かに”ありがとう”と言おう。
少々遅れたりしても、決して”私の食事はいったいいつくるんだ”など言わない。
食事中、タバコや電話をする為に何度も何度も席を立たない。
会計をしたい時は、担当のサーバーに目で合図する。決して大声で”チェーック!”なんて言わない。

私もそれほど食べ歩きをする方でもないし、高級な所などには全くと言っていい程縁がないが、上記のような人々を目にするとこっちの食事がまずくなる。

基本的にチップは請求金額の20%を置く。
これは私の基準だがマンハッタンの平均に近いと思う。
$50の食事で$10、$9のタクシー代で$2、$60のヘアカットで$13。
もちろん、これは!と思う良い気分にしてくれた時はもっと置くし、反対の時は最低でも15%は置く。

まれに、若い子らが逃げるようにレストランを出る時は決まって、担当のサーバーが彼らを店の外まで追いかけて行ってる。チップが少なすぎて、もしくは無くて追いかけているのである。

NYではチップを払わなければいけないと法律で決められている。全くすごい法律である。

カードで支払ったとき、上から順に、請求金額、チップ、合計金額、サインと4行になっていて、支払う人がチップ、合計金額、サインを記入するようになっている。
お店によってはチップ込みのチェックが来ることも少なくない。
堂々と、店のど真ん中に”◯◯人以上のグループのお客様のチップは18%以上です”とサインを出してるところもある。

日本語で言うとチップは”心づけ”または”お祝儀”となり、”払わたくなければ払わなくてもいい”ととらえがちだが、こちらでは法律違反になる。

そう考えると確かに違和感もあるが、こちらの日常生活の中で、”ありがとう”の気持ちを込めてチップを置く毎日が当然になっている。
法律どうこうじゃなくて、サービスしてくれる方々の気配りを考えると、ただ”ありがとー”と言うだけでは気がすまないのである。

以前、知り合いの方で日本に初めて旅行に行かれる方がいた。
その方に”日本はどこに行ってもチップ払う必要ないからね~”と教えてあげたら、”じゃあ、どーやって有難うしたらいいのよ~”と泣きつかれた。
今度、無チップ文化の感想を聞いてみよう。