奈良市の最重要課題である環境清美工場建替問題を考える第三回


最終の今回は、調停条項の内容と、クリーンセンター建設計画策定委員会の規則を確認したうえで、策定委員会が果たすべき役割における問題点を確認し、そのうえで移転計画における私なりの考えをのべます。


1.公害調停

奈良市は平成17年12月に現工場周辺の調停申請人と奈良市との間で締結した移転建設を趣旨とした調停を締結しています。これにより、新たな候補地を選定して新施設を建設する必要があります。


資料1:公害調停

調停条項第1条二項に「平成20年3月末日までに、新施設の用地の候補地を選定するものとし、用地の選定方法については、公募も視野に入れ、移転建設計画策定委員会において決定する」このように定められています。ここでは赤字で記載した、調停条項に定められた二点について確認しておきたいと思います。まず一点目「用地の選定は策定委員会が行うもの」であります。二点目は「用地も策定委員会において決定する」こう定められています。

このように調停申請人と奈良市との間で締結した調停条項で定められていることをあらためて確認しておきます。


2.クリーンセンター建設計画策定委員会規則

公害調停条項により設置された、「移転建設計画策定委員会」は、のちに名称が「奈良市クリーンセンター建設計画策定委員会」と変更されます。


資料2: クリーンセンター建設計画策定委員会規則

クリーンセンター建設計画策定委員会規則第2条には委員会が審議する事項が明記され、第2条(2)に、「奈良市クリーンセンター建設計画に係る用地の選定および事業手法の検討に関すること」と明記されています。

委員会規則により「用地選定」と「事業手法の検討は、クリーンセンター建設計画策定委員会で審議しなくてはならない事項である点を確認しておきます。


3.現計画の問題点

迷惑施設と位置付けられる環境清美工場の建設計画については、全国の多くの自治体で、地元及び周辺自治体から受け入れ反対などの声があがり事業進捗には多くの課題が立ちはだかるのが現実です。ここでは、公害調停を締結している奈良市の現状のみに視点を絞り、現時点で何が問題で、なぜ議会の多数(2/3を超える)の反対により、現計画の予算が削減されたのかを確認していきます。


(1)用地の選定

先ほど(1.と2.)確認した、「新施設の用地の候補地選定」についてです。

現計画における候補地は「七条地区」ですが、これは、大和郡山市他との広域化計画を前提に、奈良市によって決められた候補地であり、策定委員会へは事後報告されました。策定委員会の渡邊委員長も「広域化計画として事後報告受けた」と認めておられます。さらに、広域化計画の頓挫後は、奈良市単独の計画でも七条地区の候補地を「策定委員会として是認する」との姿勢がしめられただけでした。このように、策定委員会が公害調停及び委員会規則に反し、「候補地選定」を行わず、市が決めた候補地を是認しただけの行為にとどまっていることが、予算案否決の理由のひとつでした。

その後もなお、現候補地で推し進めようとする市は、新年度に入り5月10日にクリーンセンター建設計画策定委員会を開催し、議論不足の意見や反対意見もある中、「七条地区は候補地として敵地である」との議決が半ば強引に採択されました。しかし、あくまでもあと付けの議決であり、策定委員会規則に問題がないとはいえないと考えます。


(2)事業手法の検討

つぎに(1.と2.)確認した、「事業手法の検討」についてです。

市は、令和6年2月に、「新クリーンセンター施設整備基本計画(案)概要版」を発表しました。※下記参照

https://www.city.nara.lg.jp/uploaded/attachment/177794.pdf

さらに、令和6年3月には、「新クリーンセンター施設整備基本計画(案)」を発表しています。※下記参照

https://www.city.nara.lg.jp/uploaded/attachment/177793.pdf

その後市は、5月31日までを期限に「意見募集」を実施しています。※下記参照

先ほどのべた、5月10日開催の第65回策定委員会の前回委員会は、令和5年8月18日に開催された第64回策定委員会です。※下記参照

このことから、すでに公表され、意見募集まで実施している新クリーンセンター施設整備基本計画(案)について、事業手法の検討」が策定委員会規則に定めてあるにもかかわらず、策定委員会での審査・検討が行われておらず、市が独断で公表していることは明らかです。行政手続き上の大きな問題です。


(3)議会の対応

これら、法令や必要な行政手続きを無視した市の行政運営を重くみた議会は、『公害調停を遵守しておらず独善的で、これを前提に策定した「施設整備基本計画(案)」をパブリックコメントに付したのは市民に誤った情報を流布し不誠実』などとして、議会提案の監査請求議案を提出しました。今月5日開催の本会議で可決する見通しです。※下記参照


4.結論

ここまで策定委員会の規則を確認し、策定委員会が果たすべき役割における問題点を確認してきました。最後に移転計画における私なりの考えをのべます。私の考えは「広域化で七条地区」です。以下にその理由と妥当性をのべていきます。


(1)5市町で始まった広域化勉強会

5市町で始まった広域化勉強会は、平成30年12月に中間報告書を提出しています。※下記資料(2枚)参照



その後、生駒市・平群町が勉強会から脱退し、広域化勉強会は、大和郡山市・斑鳩町・奈良市の三市町となり、令和3年4月には中間報告書が提出されています。下記資料(2枚)参照

ここまでは順調な広域化勉強会でした。しかし、その後、令和3年に大和郡山市が「奈良市の建設予定地(同市七条地区)は適地とはいえない」として勉強会から離脱。さらに令和4年には斑鳩町が勉強会から離脱したことで、奈良市単独となり、この時点で広域化が頓挫しています。


(2)勉強会離脱の理由

5市町で始まった広域化勉強会から離脱された市町の理由はそれぞれですが、大きな理由のひとつは、「更新(新施設稼働目標)時期の時間差」です。



平成30年提出の中間報告書

平成30年提出の中間報告書でも、すで基幹改良工事を終えた大和郡山市と、奈良市の現工場の稼働時期の時間差「4年」が課題としてあげられています。生駒市においては、10年程度の時間差があり、早期に勉強会から脱退された理由はこの更新(新施設稼働目標)時期の時間差によることの理由が大きいです。




※令和3年提出の中間報告書

2市町の脱退を経て、3市町による広域化勉強会が継続されていた訳ですが、令和3年提出の中間報告書では、大和郡山市と奈良市の稼働目標の時間差は「三年」に短縮されていることが確認できます。ただ、本報告書提出時点でも、広域化へ参加するタイミング時期の調整が課題にあげられています。注目していだだきたい点は、平成30年提出の中間報告書では、奈良市の新施設稼働目標は2028年であったものが、下記添付の令和3年提出の中間報告書では2029年の稼働目標に下方修正されていることとをあわせてご確認ください。


※朝日新聞デジタル版

さらに、現在奈良市の環境清美工場は、改修費140億円をかけて、大規模改修工事を行なうことが決まりました。これにより工場を「おおむね10年間」維持できると、市は説明しており。新施設の稼働目標は令和14(2023)年度に修正されています。この下方修正を確認したうえで、山本が加筆した、令和3年提出の中間報告書下記資料をご確認ください!

大規模改修を経て、10年間の工場の稼働維持により、新施設の稼働目標が令和14(2032)年度になったことで、先ほど課題と指摘されていた、大和郡山市との更新(新施設稼働目標)時期の時間差がなくなっていることが確認できます。課題であった広域化へ参加するタイミングの調整問題が解決されています。やはり広域化を目指すべきです!


5.おわりに

ここまで、調停条項の内容、クリーンセンター建設計画策定委員会の規則を確認したうえで、策定委員会が果たすべき役割からの問題点を確認し、そのうえで理由を添え、移転計画における私なりの考えをのべました。

財政的な観点から考えると、現地建替がもっとも有効な政策ですが、公害調停を締結している以上、法的にクリアしなければならないハードルが高すぎて、現実的な政策とはいえないと考えます。移転が条件の公害調停である以上、やはり「広域化の七条地区」が最善策と考えます。しかし七条地区を候補地とするならば、最低でも大和郡山市との広域化は必須です。広域化頓挫後も七条地区に執着し他の候補地選定を怠った市の責任は免れられないと考えます。さらに広域化計画の失敗については、議会答弁や聞き取り調査で明らかになっていますが、広域化を議題とした市長と市長の協議の場が一度も開かれていないことが問題であり、奈良市のトップは一度も大和郡山市に足を運び、広域化のお願いをしていません。奈良市の七条地区に隣接している、大和郡山市の九条に現環境清美工場はあります。お願いする側は奈良市です。中核市とか人口が多いとか関係なく、頭を下げてお願いする側は奈良市です。残念ですが現在の奈良市のトップには、大人としてあたり前の考えが欠落しています。広域化頓挫の責任が誰にあるかは明白です。あくまでも仮の話しですが、私がマニフェストを掲げることがあれば、「広域化を目指し、まずは大和郡山市との協議の場の実現に最大限努力します!」とし、もし、仕事が出来る立場を与えられたならば、公務に影響を及ぼさない範囲で毎日でも大和郡山市に足を運び、とにかくお願いすることに力を注ぎます!それともう一点!広域化実現には奈良県との関係修復は絶対です。大和郡山市へのお願いと並行して、奈良県への相談及びお願いを怠らず、広域化実現を目指します。仮の話しですが...私ならそうします。会社経営も営業マンも経験してき私は、足を運びお願いすることの大切さを何度も経験してきました。奈良市民のため!政策実現のため!ならできます!

何度も言いますが、仮の話しです....ご理解ください。

ここまで、私の考えをのべてきましたが、考えを明らかにした理由は、現計画に関する予算に反対した我々に対して、「反対のための反対」とか、「難癖」とか、反対した議員を非難する声があるからです。今回は調停条項の内容。クリーンセンター建設計画策定委員会の規則を確認し、策定委員会が果たすべき役割における問題点を確認しました。読んでいただいて、資料をご確認いただけたならば、なぜ現計画に関する予算を認めることができないのか理解いただけると信じています。


かなりの長文になりましたが、読んでいただいたことに感謝申しあげます。ありがとうございました。


以上