奈良市議会令和6年3月定例会は、22日に予算決算委員会総括質疑が行われました。我が会派(自由民主党)を含め、多くの会派より、学校給食において文部科学省が示す、学校給食接種基準による栄養価を満たしていないことを問題視し、公費負担による食材調達経費の増額を訴えました。採決前に公明党・自民党・新世の会・日本維新の4会派共同で10項目約3億3,000万円を減額する修正案を予算決算委員会に提出し、共産党と無所属の一部及び自民系の1人を含む30人が賛成し可決しました。なお修正案に反対し、提出された原案(市長案)に賛成されたのは自民・無所属の会4人と無所属1人の5人です。4会派共同による修正案提出の趣旨説明では、市長に対し「削減した一般財源分につきましては、奈良市の子どもたちの健康と食育を守るために学校給食の食材調達費にご活用いただくよう」要望しています。以上のように趣旨説明しており、修正減額のうち一般財源約1億円については物価高騰の影響で上昇した小中学校の給食材料費を市が補うことを提案しています。


学校給食接種基準

学校給食実施基準は、文部科学省が策定した児童生徒1人における給食1回当たりの学校給食摂取基準のことをいい、 児童または生徒の健康の増進および食育の推進を図るために望ましい栄養量を算出したものです。 学校給食栄養管理者はこれを踏まえた献立作成を行い、定められた栄養量を適切に設定することが必要です


【奈良市で提供される給食】

今定例会の質疑を通じ、学校給食について文部科学省が示す、学校給食接種基準を満たしていない現状を市教育委員会も認めています。


添付1:総括質疑で日本維新の会柳田議員提出資料「小学校給食・バンビホーム弁当の1食当たりkcal &単価及び文部科学省給食接種基準」※資料は、奈良市の学校給食の実情をより明確に説明するため、大西淳文議員が作成されたものです。


資料のグラフが示すように、奈良市の学校給食は文部科学省が定める学校給食接種基準の650kcalを下回っています。反面、バンビホームで提供される弁当は摂取基準を上回っています。


添付2:令和5年11月22日に市立の小学校で提供された給食


添付の給食画像で確認いただきたいのですが、奈良市で提供されている給食一例です。物価高騰が続き栄養価を確保することが厳しい状況下において栄養士さんや調理員さんの知恵と努力により、美味しく栄養ある給食を提供いただいています。しかし現場からは「やりくりに限界がきています」や「デザートなどをつけることができない」など、厳しい声が届けられていますし、画像で確認できるように分量に関しても十分とは言えないと思います。


【3月定例会の議論】

3月定例会においては、政党の枠組みを超え多数の議員が給食問題を取り上げ、市費による給食材料費の一部負担を訴えました。



添付3:18-19日に開催された予算決算委員長観光文教分科会で山本が教育部保険給食課に対し行った質疑


添付4:給食用材料費が計上されている令和6年度予算説明調書


問5で、保険給食課からの予算要求額を問う質疑に対しては「給食用材料費の予算要求額は、令和6年度の予定在籍児童生徒数等と、令和6年度の喫食予定回数より算出した額、物価高騰に伴う補填分及び地産地消対応分、検食・保存食・予備用食材購入費及び緊急対応物資の購入費、保存食用の牛乳購入費、合計12億6,490万5千円です」と答弁がありました。これにより予算額と予算要求額が同じであったことが明らかにされました。※添付4の資料で予算額12億6,490万5千円が確認できます。

一方では、文部科学省が示す、学校給食接種基準が満たされていないことを認めながらも、要求額を増やし栄養価が満たされた給食が提供できる財源確保していない教育委員会の実態が明らかになりました。

問8では、期間を設け市が給食を材料費の一部を負担する考えを問いましたが、課長の答弁は「学校給食費につきましては、学校給食法第11条第2項で『学校給食に要する経費は、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者負担とする』と規定されていますことから、免除対象者を除き、受益者負担の原則に基づき基本的には保護者にご負担いただくものと考えております。給食費の公費負担の考えについて、でございますが、伴うことから教育委員会だけで判断できるものではございませんので、市長部局との調整が必要なものと考えます」このような答弁にとどまり、一般財源の負担を理由に市長部局と相談しなければ判断できない...と言い逃れました。


【地方自治法による首長に専属する権限】

「地方自治法の定めにより、地方自治体における予算の編成、調製、提案、執行は、首長に専属する権限であり、議会側には認められていない。相互の抑制と均衡が機能する二元代表制の下でも、首長に強い権限が与えられている」

上記は、私が執筆した修士論文からの引用です。残念ながら議決機関である議会には、予算の編成、調製、提案、執行これらの権限は与えられておらず、仮に予算を増額した修正案が議会で可決したとしても首長は執行する義務を負いません。

つぎに赤字の「調製」にもついてですが、けっして誤字ではありません。財政における調製とは「業務に関する経費を歳入とのバランスの上に計上することで、予算の編成までの一切の行為」とされており、今回の減額修正により約1億円の一般財源が削減できたことで、調製可能となりました。これで教育委員会が言い訳してきた「『財政が』とか『市長部局と相談しないと』...などという言い訳ができなくなった訳です。


添付5:山本執筆の修士論文


会派・政党の枠組みを超えた議会の多数の声によって、あとは教育委員会と市長部局の判断に委ねるところまで漕ぎつけることができました。


【議会の多数の声】

約1億円の一般財源を生み出す修正案に賛成した30名および、委員長は採決に加わりませんが委員長は修正案提出会派の公明党所属の議員であることから委員長を加え、31名の総意として、学校の給食材料費を市が補うことを求めています。