奈良市の現在の最重要課題は老朽化が進む環境清美工場の建替えです。市の関係者の誰もが認識しているはずです。現在の環境清美工場は昭和57年3月に1号炉が竣工(昭和60 年8月2・3・4号炉竣工)し、稼働開始してからすでに40 年以上経過しており、老朽化が進んでいます。ここ数年は緊急停止も頻繁に発生し安定した稼働を続けることが厳しい状況になっています。


【公害調停と候補地白紙撤回】

平成17年に、現工場周辺の調停申請人と奈良市との間で締結した移転建設を趣旨とした調停により、新たな建設候補地を選定し新施設を建設することになっています。平成18年には「奈良市クリーンセンター建設計画策定委員会」が設置され、同策定委員会は、平成25年に市東部の東里地区(中ノ川町・東鳴川町)を最終候補地と定め、委員会の候補地決定を受けた市は地元交渉を進めていました。しかし平成29年の市長選挙を前に突然の白紙撤回!現市長は「奈良市全域より候補地を見直し再選定する」と計画変更を表明されました

この時点で10年を超える議論が無駄にされた時間が存在し、その責任が誰にあるのか⁈を指摘しておきたい!と思います。


【候補地見直しと広域化】

市長選挙を経て、平成30年からは県北部地域でのごみ処理広域化を視野に入れて、5市町(奈良市・大和郡山市・生駒市・平群町・斑鳩町)で勉強会が行われ、奈良市は「広域化による七条地区」を候補地と定め新クリーンセンターの建設を目指していました。しかし、生駒市と平群町が広域化計画から離脱。令和3年には大和郡山市が「奈良市の建設予定地(同市七条地区)は適地とはいえない」として勉強会から離脱。さらに令和4年には斑鳩町が勉強会から離脱し建設計画から外れる方針を決め、奈良市はごみ処理の広域化をめざしてきましたが、斑鳩町の離脱で組む自治体がなくなり、この時点で広域化が頓挫しています。

確認しておきたいのは、市は移転建設候補地見直しで、広域化を前提に七条地区を定めていることです!当時の議会議論においても「広域化がなくなった時点で候補地は見直すべき!」との声が多くありました。しかしこれらの議会の声に市は耳を傾けず今日まで計画変更はされていません!

再びこの時点でプラス3・4年におよぶ議論の時間が無駄にされています。この責任が誰にあるのか⁈を再び指摘しておきたい!と思います。


【市の予算化の実態】

クリーンセンター建設推進課に配当された予算でその年々の市の考えが伺えます。


※令和4年度歳出予算説明調書(クリーンセンター建設推進課)

添付の令和4年度歳出予算説明調書で確認できるのですが、825ページに「まちづくり拠点基本構想策定経費 18,500千円」「施設整備基本計画策定経費 24,500千円」「アクセス道路整備検討に伴う対策等検討経費 30,000千円」などの基礎的な調査業務の実施するための予算化が実施されていました。

先ほどのべた、斑鳩町の離脱表明は令和4年度ですので、令和4年度の予算化においては広域化を目指す七条地区での移転建設予算が計上されていたことが確認できます。




※令和5年度歳出予算説明調書(クリーンセンター建設推進課)

しかし、添付の令和5年度歳出予算説明調書で確認できるのですが、本年度予算には令和4年度に予算化していた基礎的な調査業務の実施するための予算は予算化されていません。これは昨年度に広域化が頓挫したことで建設計画自体が停滞していることのあらわれです。念のため申し上げますが、予算説明調書の次ページをわざわざと添付漏れしていないわけではありません。本年度のクリーンセンター建設推進課予算は事務経費と策定委員会の運営に関する経費のみです。

おそらく市は、本年度の途中で七条地区を候補地とした関連予算を提出する考えでいたんだと思います。あくまで推察です。しかしなんの進捗もないまま新年度予算の提出時期を迎えました。

プラス1年!なんの進捗もないまま時間だけが過ぎ去りました。この責任が誰にあるのか⁈を三度指摘しておきたい!と思います。


【新年度予算】

市は新年度予算に七条地区を候補地とする関連予算を提出予定です。これは1月30日に開催された市民環境委員会質疑で明らかにされました。担当課の答弁によると、「環境への影響を事前に調査・予測評価する環境影響評価」「アクセス道路の事前調査」「地表面下の地盤状況を把握する為の地質調査」「土地の利用状況を把握するための地歴調査」」で、これら予算により基礎的な調査業務の実施を行う考えです。(※奈良新聞 令和6年1月31日掲載)

過去に計上され、未執行となった同種の予算や、類似の開発者関連予算を考慮すると、おそらく150,000千円強〜200,000千円弱の予算になると思います。21日開催の内示会(提出議案の説明会)で明らかになります。


【議会の判断】

現在、地元七条地区から建設反対の請願が二本提出されており、地元合意は程遠い状態です。まず地元合意を得て、これら請願を取り下げていただく努力をするのが先ではないでしょうか⁈先に指摘しておきたいと思います。

関連予算が提案された場合には、議会で審議するわけですが、これまでの本会議や委員会での質疑の動向や各議員からの発言を聞いていても、この状況下で過半数議員の賛成を得て予算が可決されるとは考えにくいです。関連予算の否決や新年度予算の減額修正もあり得る状況だと思います。(※あくまでも現在の議会の情勢をフラットな目線で見た立場からの推察です)


【議会の責任⁈】

仮に関連予算の否決や新年度予算の減額修正が行われた場合、おそらく市は「現環境清美工場は老朽化が著しく、建替えは待ったなしの状態なのに議会が反対した!」「議会の反対により計画が停滞した!」このような出かたをしてくるでしょう。(※あくまでも推察です。これまでの経験から推測する予測行動です)

もってのほかです!!

これまでにのべてきたように、元の計画を白紙撤回したのは誰か?広域化の計画が頓挫した責任は誰にあるのか?その後予算化もせず一年を無駄にしたのは誰か?すべて市の責任です!これを議会に責任転換しようなどと考えるのであれば、それは責任のなすりつけだと厳しく指摘しておきます。


【まとめ】

21日の議案内示を受け、今月末に奈良市議会3月定例会が開会し新年度予算を含む審議がはじまります。35万市民が乗船する「奈良市丸」は進路を見失いつつあります。審査機関である議会の責任を果たし、安心安全な市民生活がおくれるよう、議会に与えられた権限を駆使して定例会に挑み、正しい方向に舵を向ける覚悟でいます!