【フェルナンド・トーレス これまでの道、これからの夢】

 

FIFA22でトーレスブームが起こり、早速自伝を買って読んでみた。

 

トーレスは人格者だ・・・

 

サガン鳥栖、そして日本のサッカーファンはフェルナンド・トーレスが日本に来て、日本でプレーしたことを非常に感謝し、彼のしたことすべてを今後の日本のサッカー界に還元しなければならないと感じた。

 

 

<所感>

 

①本の構成

6章から成り立っている。

 ・第1章 新天地

 ・第2章 残留争い

 ・第3章 素顔

 ・第4章 フットボール

 ・第5章 チーム

 ・第6章 未来

 

第1~3章はサガン鳥栖移籍や日本、自分の家族など感情的なトーレスが、第4~6章はフッボリスタとしてのトーレスが知れる。

なお、各章の終わりにトーレス移籍時の当時のサガン鳥栖関係者のコメントが、第6章には訳者のあとがきが載ってある。

これらのコメントもなかなかおもしろい。

 

②日本人とは違うプロ意識

かつてセレッソに所属していたウルグアイの誇るストライカー、ディエゴ・フォルラン。

彼はセレッソが試合に負けた後、チームメイトがヘラヘラと笑っているのを見て「プロフェッショナル意識がない」「勝ちに対する執念がない」と怒り?呆れ?を感じたという。

トーレスもその部分があったよう。

トーレスのサガン鳥栖移籍初年は降格危機の状態で、負けたら憤るのが普通かと思うが、どうやらそれほどの場面をトーレスは目撃していない。

日本が欧州ほどサッカーが文化として根付いていないから選手もサポーターも熱がそれほどないというのもあるだろうが、トーレスほどの選手が同じチームにいるのに、勝ちに対する執念や感情を出さないのは何か失礼な気がしてしまう。

トーレスの幼少時代、「勝たないとダメ」という考えを徹底的に叩き込まれたのも関係しているが、むしろプロ選手ならそれを持たないとダメだろう。

そのことについて、トーレスは「感情は思い切って出す」べきだと言っているのは凄い印象的だった。

 

③自身の移籍について

チームを思っての移籍というのは非常に辛い。

自分は残留したいと思うが、アトレティコを強くするため(自分の給与を良い選手の獲得資金に回すため)、移籍することを決めたのは凄いことだ。

プロ選手だからタイトルを獲得できるチームや高い給料を払えるチームに移籍しても悪くはないのだが、感情的な側面ではやはりクラブ愛を貫き通すかどうかだ。

結果として、トーレスがリバプール移籍したのは大成功だと思うが、2015年当時、トーレスがアトレティコ復帰のニュースを知ったときはそれほどトーレスのことを知らなかった身としても、なぜか嬉しかった。

それはトーレスの印象のためだろう。

ただし、その後のチェルシー移籍は良くなかったが・・・

それもあってか、この自伝ではチェルシーやミランのことについてはそれほど言及していない。

 

④日本のサッカーについて

興味深いところが2つあった。

日本のサッカーは戦術が足りてないというところ。

たしかに、日本のサッカーは戦術の浸透度がそれほどない印象がある。

スペインでは小さいころにテクニック>戦術の比重で指導しているようだが、それが段々とテクニック<戦術の比重にしていくという。

日本ではそれがない。

これでは現代サッカーで重要視されているサッカーIQが高い逸材は出てこない。

「天才は勝手にサッカーIQが高くなる」という楽観視を日本のサッカー関係者の多くはしている証拠なのかもしれないな。

それともう1つ、日本のサッカーは試合終盤になるとまるでノーガードで試合をしているというところ。

これは凄く同意する。

戦術を無視してやみくもに攻撃するというのが日本のクラブはおろか代表でもよく見られる気がする。

ここでも戦術に重きを置いていない影響が出ているのだろう。

 

⑤パッション

スペイン人らしいというか、ラテン系というか、むしろフットボーラーというか、「パッション」というのをやはり大事にしているのだなと思う。

なんだかんだいいながら日本にもそれがあるというのを認識していたトーレス。

ありがとう。

 

 

この他にもトーレスの考えるゴールパフォーマンス、アトレティコで学んだ哲学などおもしろいところが多々あるので気になる方は一読をおススメする。