松島氏のビラうちわと蓮舫氏のうちわビラ | 西陣に住んでます

松島氏のビラうちわと蓮舫氏のうちわビラ

蓮舫議員



2014年10月07日に参議院の予算委員会で民主党の村田蓮舫議員が、松島みどり法務大臣が政治活動で配布した「討議資料」を有価物である「うちわ」であると指摘し、公職選挙法における違法性を訴えるとともに安倍晋三首相大臣任命責任を追及しました。この記事ではこのやりとりについて分析してみたいと思います。

松井議員のビラうちわ

まず具体的なやりとりは次の通りです。




女の子蓮舫議員
つまり物品とは有価物、価値のあるものですね。商品として価値のあるもの。で選挙区で有価物を配ってはいけない。配布は違反。これは今明らかになりました。総務大臣自ら御答弁いただきました。長い政治経歴をお持ちで、かつ今年の夏は経産副大臣という要職にあった松島法務大臣、自身の選挙区、東京14区の荒川区内で行われたお祭りで(松島法務大臣の名前の入ったうちわのようなものをもって)これを配布されました。これは何ですか?

女の子松島法相
お答えいたします。この1年間・・・あ、どちらの向きを向けるかによって少し違うんですけれども、この1年間、国会で成立した法律の内容など、特に地元有権者が関心が高そうな内容を印刷して後援会の会合および地元の盆踊りなどのイベントの際に配布いたしました。

女の子蓮舫議員
配布したのはわかっているんです。これは何ですか?と伺っているんです。

女の子松島法相
自分の国会議員としての活動報告や政策などを印刷して配る、そのような配布物であると。なお、うちわというのは、例えばいろんなイベント会場で使い捨てのように配られている。そういうようなもので、おっしゃるような物品とか、寄付ですとか、そういうものにあたるとは認識していません。

女の子蓮舫議員
これはうちわですね。

女の子松島法相
うちわと解釈されるのであればうちわとしての使い方もできると思います。

女の子蓮舫議員
「うちわと解釈されれば」総務相、しっかりとした柄、それにつながる骨組み、これは有価物のうちわにあたりますか?

女の子高市総務相
物品とは金銭以外の有体物をいいますから、財産上の利益の一つの例示とされています。総務省としましては、個別の事案について実質的調査権を有しておりませんので、具体的な答えは差し控えざるをえないのですが、それがいわゆる個別の物品、禁じられている寄付にあたる個別の物品にあたるかどうかは、財産上の利益の供与にあたるかどうかで判断されます。例えば、ビラでしたら財産上の利益とは考えられておりません。そういうことで、具体的には私が判断する立場にはないのと、公職選挙法に抵触するようなものかいなかについては、もしもそれが訴えられた場合に捜査機関によって具体的な事実関係の調査が行われて最終的に司法による判断が行われるものです。その調査権、判断する権限を私が有していません。

女の子蓮舫議員
まったくはっきりしない、高市さんらしくない答弁をありがとうございました。例えば、都道府県の選管をホームページで検索するとすぐに出てきます。埼玉県とか、あるいは足柄市なんか持ってきましたが、寄付禁止Q&A、埼玉県の選挙管理委員会の作ったものです。「政治家が自分の名前の入っているうちわやカレンダーを選挙区内の人に対して贈ることができますか?」という想定問に対して答え「寄付の禁止に該当し、できません。」。松島大臣違法ではないですか?

女の子松島法相
政治家個人としては、これは公職選挙法上の寄付には当たらない、有価物である物品にはあたらないと解釈して制作をいたしました。ただ法務大臣としてどうであるかと聞かれますと、それはいろいろと影響がありましょうから、ここで答弁は差し控えさせていただきます。

女の子蓮舫議員
すいません。確認答弁をいただけますか?法務大臣としてはいろいろと影響があるから言えない。どんな影響ですか?

女の子松島法相
討議資料として私自身はお配りしました。そして有価物に当たるとは考えておりません。それが政治家としての私の見解でございます。

女の子蓮舫議員
うちわには確かに小さく討議資料と書いてあります。でも討議資料と記載をしても不特定多数に配布をしている以上、このことによって違法性はなくなりません。法務大臣だからそこはよく御存じじゃないですか?あらためて公選法199条の3、これ把握していますか?

女の子松島法相
公職選挙法で示される有価物、物品であるとは考えていません。討議資料として法律を世の中に、多くの人に知ってもらいたいという気持ちで書き表したものです。以上です。

女の子蓮舫議員
あの~まったく法律を自分に都合のよい解釈をしないでいただけますか。討議資料としても選挙区内のお祭りで有権者に不特定多数に配ってはいけないと公選法が禁止をしているんです。その上で199条の3、それは御存じですか?

女の子松島法相
公職選挙法は存じ上げております。

女の子蓮舫議員
条文を教えてください。199条3

女の子松島法相
「公職選挙法199条の3。公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体又はその支部に対し寄附をする場合は、この限りでない。」。寄付という認識はもっていません。

女の子蓮舫議員
199条の3は、ここうちわには自由民主党東京14区選挙区支部って書いてあるんですけれども、議員が役職員である団体は、選挙区内においてその氏名を表示する方法で寄付をすることが禁止をされています。つまり総支部長は松島みどり大臣です。松島みどり大臣が総支部?を務める政党支部が大臣の名前を入れて選挙区で不特定多数に配った。一般の方がいろいろサイトにアップをしてよく目立つんですけども、櫓の上で踊っている大臣、その櫓の周りで踊っている有権者の人達の背中にこの有価物のうちわが差されている。もういろんな人たちが持ってるんですよ。お祭り会場で。しかも、一箇所ではない。墨田区、荒川区両方の複数のお祭りです。これは違法じゃないですか?笑っている場合じゃないです。

女の子松島法相
このうちわは、うちわのように見えるかも知れませんが、(紛糾)
うちわのように見えるかも知れませんけれども、これはどういうものをうちわとおっしゃってて有価物である、そういう価値のあるものとおっしゃっているのかわからないのですけれども、その示したい法律が丸くなっているというわけでございますから、イベント会場などでも、意味なくっていうか無料でいくらでも配っている、配り捨てられているものがいくらでもございます。それに類するものだと考えております。

女の子蓮舫議員
法務大臣自身がこれをうちわと認識されているんじゃないですか?でもうちわと認めると、自分が法律を違反しているということを認めるから言えないだけであって、総理、法務を司る大臣ですよ。その方がこういうことを自らやってて適任でしょうか?

男の子安倍首相
先ほど来、総務大臣また法務大臣が説明をしておりますように、有価物として認識していたかどうかということなんだろうと思うわけでございますが、基本的にこうした疑いを受ける以上、今後大臣においてはこうしたものの配布を行わないことが望ましいと思っております。

女の子蓮舫議員
疑いを受けるものを行ってしまった。これからやりませんじゃなくてやった人を、法を司る法務大臣に任命したのは、私は不適任だったと思わざるを得ません。


以上のやり取りにおいて、質問相手に対してまるで汚いものでも見るかのような目つきでヒステリックに追及する蓮舫議員は、あくまで私が見る限り、明らかに演技ががっていて、民主党政権成立前の民主党を見ているような印象を受けました。当時はこのような民主党の追及手法をマスメディアが大きく取り上げ、一部国民が迎合したわけですが、時代は変わってマスメディアの取り扱いも小さくなり、多くの国民も客観的にこのやり取りを観察していたと思います。実際、以上のやり取りに対する報道は概して次のようでした。

[松島法相の「うちわ」は物品?資料?蓮舫氏指摘]
2014年10月07日11時38分 読売新聞

民主党の蓮舫氏は、松島法相が地元の盆踊りなどで配布した「うちわ」が公職選挙法が寄付を禁じる「物品」にあたると指摘した。
これに対し松島氏は、最近成立した法律名などを印刷した「討議資料」として配ったとした上で、「うちわのように見えるかもしれないが、イベント会場で無料配布しているものに類するものだ」と釈明した。安倍首相は「疑いを受ける以上、今後配布しないのが望ましい」と述べた。
外見はどちらも「うちわ」にしか見えないが、蓮舫氏は「松島氏が選挙でない時に、骨組みがしっかりしたもの(うちわ)を不特定多数の有権者に配るのは明らかに抵触する」と主張し、松島氏との違いを強調した。


蓮舫議員のうちわビラ

松島氏の主張は、イベント会場で無料配布しているようなうちわに見えるかもしれない「討議資料」を配布したとするものです。一方、蓮舫氏の主張は、うちわは「骨組みがしっかりしたもの」と定義でき、このうちわを選挙期間外不特定多数の有権者に配布したことに松島氏の違法性があるとするものです。また、蓮舫氏もうちわともとられるビラを選挙期間中に配布していたことが判明しましたが、これには骨組みがなく、蓮舫氏によればこれは「うちわビラ」と称するものであるとのことです。

[女性閣僚と蓮舫議員が舌戦 「うちわ」めぐり紛糾]
2014年10月07日 FNNスーパーニュース



この映像において注目すべきは4:40~5:10のシーンです。

女の子キャスター
今回こちらの松島大臣のうちわを追求した蓮舫議員ですが、実は蓮舫議員も選挙の際にこのようなものを配っていたんです。スーパーニュースの直撃に対して蓮舫議員はこのように答えています。

女の子蓮舫議員
いわゆるうちわビラとうちわは違いますので・・・
総務省からもクレームはついてなく、それは与野党問わず広く配布されていることは皆さんご存じだと思います。


蓮舫氏によれば、蓮舫氏が配布した骨組みのない「うちわビラ」は合法で、松島氏が配布した骨組みのしっかりした「ビラうちわ」は違法であるとのことです。

さて、以上のやりとりにおいて、議論のポイントとして「有権者への有価物の配布」「選挙外期間における不特定多数への討議資料の配布」の二つをあげることができます。以下それぞれ分けて分析していきます。


1有権者への有価物の配布

まず一つの議論のポイントは、松島大臣が配布している「うちわのようなもの」が寄付に値する物品(有価物)であるかどうかということです。このことを判断するにあたっては、その物品の対価である価格に注目して考えることにします。近代経済学において財の効用を評価する上で価格は重要なインデックスとなることが知られています。また、蓮舫氏も物品を「商品として価値があるもの」と定義してることからこのような観点に立って分析することに対して異存はないものと考えられます。

そこで、蓮舫氏が配布した骨組みなしのボールファン(うちわビラ)の価格と松島氏が配布した骨組みがしっかりしたもの(ビラうちわ)の価格を市況を基に比較してみます。

盆踊りの参加人数は不確定ですが、荒川区の盆踊り大会の規模は万単位の参加者が集まるものとは考えにくく1000人程度の参加であると考えられます。この全員に「うちわビラ」あるいは「ビラうちわ」を配布するとすると、うちわ1本あたりの価格を見積もることができます。

Google検索でトップにランキングされている[うちわキング]というサイトを見て、うちわビラとビラうちわを比較してみると次の通りです。

[ボールファン(うちわビラ)]
1,000本 94,000円(税別) @94円

[まん丸うちわ(ビラうちわ)]
1,000本 88,000円(税別) @88円

これを見ると、1000本くらいの範囲ではほとんど価格に差はなく、意外にも「うちわビラ」よりも「ビラうちわ」の方が安いと言えます。これはうちわとして使用できる厚紙がそんなに安くないことに起因しているものと推察され、特定の数量の範囲内では厚紙で作成するうちわが骨組があるうちわと比べて商品価値が高くなっていると言えます。つまり、蓮舫氏が「うちわビラ」を有価物ではないと認定している以上、ビラうちわは有価物とは言えないばかりか、「ビラうちわ」を配布物として選択した方がむしろ国民にとっては望ましいと言えます。大手のうちわ製作業者で「ビラうちわ」が「うちわビラ」よりも配布物として廉価である事例がある限り、たとえいくつかの選挙管理委員会でうちわを違法と認定していたとしても、包括的な判断を行う司法裁判においては違法とは認定されないものと推察されます。

元来、公職選挙法では常識の範囲内における利益の供与を明確に認めています。

公職選挙法第139条(飲食物の提供の禁止)
何人も、選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない。


つまり、湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子は有権者に提供することが認められているわけです。常識的に考えると、例えば価格100円程度の羊羹は認定の範囲内にあると考えられ、このことから単価100円未満の「うちわビラ」および「ビラうちわ」は有価物とは認められないものと推察されます。これは蓮舫氏が言うように「うちわビラが与野党問わず広く配布されていること」が総務省から認められているファクトからも明らかです。

ちなみに、A4の両面カラー印刷のリーフレットの場合、Google検索でトップにランキングされている[マツオ印刷株式会社]によれば、1000部を40,000円程度で作成することができます。つまり、特定の部数の範囲内においてリーフレットのみを作成すれば、うちわの半額以下と言えます。もし蓮舫氏がストリクトに管理すべきであると主張するのであれば、「うちわビラ」も含めて禁止すべきであると言えます。以上、「うちわビラ」と「ビラうちわ」の価格に有意な差はないものと考えられ、有意な差があると思いこんでいる蓮舫氏の議論は適正でないと考えます。


2選挙外期間における不特定多数への討議資料の配布

もう一つの議論のポイントは、松島氏が選挙外期間に不特定多数の有権者に配布を行ったことです。政治にかかわる活動は憲法によって保障されているものであり、選挙期間内の活動は選挙運動」、選挙期間外の活動は「政治活動」として認識されます。ただし、政治活動の場合、名前の入った文書資料は「討議資料」として後援会への勧誘や後援会の内部資料として希望者に配布することが求められます。今回、松島氏の「ビラうちわ」には「討議資料」という文言が入っていますが、これはこのような取り決めによるためです。また、選挙運動中のビラには選挙管理委員会の証書を貼ることが求められます。これに対して政治活動中の討議資料にはこのような証書はありません。蓮舫氏の「うちわビラ」に証書が貼られていて、松島氏の「ビラうちわ」に証書が貼られていないのはこのためです。

ここで、盆踊り会場という人が集まる場所において後援会への勧誘を名目として頒布した場合には問題がないと言えるかと思いますが、盆踊りという政治活動とは異なる目的に集まった不特定多数に内部資料をことわりなく頒布した場合には問題があると言えます。この点については、松島氏の説明は曖昧であり、明確に答弁すべきであったと言えます。

今回の松島氏の答弁において大半の部分は理性的で的確であったと考えますが、蓮舫氏の明快でストレートな質問に対して論点をずらす場面もいくつかあり、まさに「不特定多数に対する配布」という点については明確な回答が得られていません。このような不誠実な回答は国民にとって不利益であり、今後明確に答弁すべきであると言えます。


メモメモメモメモメモ


公職選挙法は極めて難解であり、総務省に設置された中央選挙管理委員会と各地方に設置された地方公共団体の選挙管理委員会は独自の解釈で選挙管理のためのフレームワークをサジェストしますが、警告や捜査を行う権限を有していません。実際に選挙違反の警告や捜査を行うのは警察であり、選挙違反の判断を行うのは司法です。したがって、蓮舫氏の言うように、地方の選挙管理委員会が候補者の名前が入ったうちわを禁止したところで、個別の事案についての最終的な法的判断は司法の解釈にコミットされることになります。選挙管理委員会の解釈と司法と解釈に乖離が生じる可能性がある構造になっている点については大きな問題があると思いますが、現実の事案は必ずしも単純ではなく、むしろ法律を作る政治家自体が法律のセキュリティーホールを狙って新しい選挙活動を続けてきた点に問題があると考えます。

もし松島法相に誠意があるのであれば、まずは不特定多数に対する配布について説明をすると同時に、この機会に公職選挙法の問題点を明らかにした上でより明確な基準を制定する努力を行っていただきたく思います。

なお、今回の議論によって、公職選挙法の解釈にまだまだ問題があることが再認識されましたが、「ビラうちわ」と「うちわビラ」についての差(骨組みの有無)という国民にとってほとんどミーニングレスな事由を基に、民主党お得意のヒステリックな人格論証を展開することによって内閣を追及しようとした蓮舫氏は、政治家としての資質に欠けると考えます。現代の日本において、うちわを受け取ったところで政治家に恩義を感じて投票行動を起こす国民が果たしているのか?大いに疑問をもつところです。そもそもうちわの価値は、多くの場合その美しい絵柄にあり、この絵柄に希少価値が生じて経済財となります。これに対して絵柄にCMなどが書かれて無料配布されているうちわは、需要と比較して供給がはるかに大きい自由財と言え、代価を払って手に入れる性質のものではありません。さらに少し視点を変えれば、夏の酷暑が問題となっている日本の野外政治集会において、わずかな涼をとるうちわに類するものを現場で提供することは、利益提供というよりはむしろ国民の健康面に対する配慮であると言えるかと思います。冷房が効いた屋内で茶菓子を提供するよりは、炎天下の屋外でうちわに類する「有形物」を提供する方がプライオリティが高いと考える次第です。