「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究(9) 風評被害の発信源 | 西陣に住んでます

「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究(9) 風評被害の発信源

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TBSテレビの朝のニュースショウ「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究の第9回目も、不当な論拠(Irrelevant)の事例を紹介したいと思います。


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この記事では最近の放送から原発事故処理に関わる事案について着目したいと思います。



メモ2013/05/14 「もんじゅ」「地下水」原子力政策2つの壁


みのもんた氏:福島の原発の目の前に広がる海は太平洋、アメリカまでつながってるんですよ。メキシコまでつながってるんですよ。しかもこの間、何かでやってましたけど、太平洋をこう潮の流れがある。大~きく。海の水はその流れによってぐ~っと回ってるわけですよ。そうすると、もし汚染された水が海に流れ出ると、太平洋上にず~~~っと流れていく。それが一つと、もし汚染された水が福島の原発沖の海水にあってそれを食べているプランクトン、そのプランクトンを食べている魚、その魚を食べるさらに大きい魚というこの連鎖っていうのは、すごい速さで広がるんだよって誰か言ってましたね。


みのもんた氏は「誰かが言ってた」という他人の言説に訴える論証で、上記のようなことを得意気に話しています。まず、原発事故があった当初に比べて現在の港湾内の放射線レベルは、事故当初の放射線レベルに比べれば1/1000~1/10000であり、外海につながるシルトフェンスの外の部分では告示濃度限度を大きく下回っています[資料1] [資料2] 。そのような状況の中で、みのもんた氏の発言は世間の不安を煽り、風評被害を増幅させる極めて不謹慎なドミノ理論です。公共の電波で放送された内容はすごい速さで広がります。ちなみに、水産庁の調査において、福島近海でも魚体中の放射性セシウム濃度も徐々に低下していることが報告されており[資料3] [資料4] 、みのもんた氏が主張しているようなドミノセオリーは成立しません。


さて、現在の福島原発周辺の汚染水の状況ですが、安倍首相が発言したように港湾外に規制値を超えるような流出をさせていないということは事実であり[資料1] [資料2] 、法的な観点では状況は完全に制御下(Under control)にあります。このことについては、原子力規制委員会の田中俊一委員長も同様の認識を持っています[→時事通信] 。現在、「朝ズバッ」も含めてテレビや新聞では、規制値を大幅に下回るわずかな放射性物質の流出を問題視し、これをもってコントロールされていないという主張があります。もちろん、ボーリング孔で規制値を超える高濃度の放射性物質が検出されたことは事実であり、このような一部の高濃度の地下水が生じないように対策を行うことは絶対条件であると考えます。ただ、この事実を持ってみのもんた氏が言うように世界が恐ろしい危機に直面しているというような風説を流すのは悪質であると考えます。すでにこのような風評で韓国が非科学的に水産物の輸入を禁止するという事態も起きています。[資料1] のpp.5-6を見れば明らかなように、現在の状況をこんなに問題視するのであれば、なぜ1年半前にシルトフェンス内の海水が現在の10倍以上の放射線量を持っていたことを問題にしてこなかったのか、はなはだ疑問と言えます。そもそも、もし規制値未満の放射性物質の流出がゼロでない限りコントロールされていないという主張が正しいとするのであれば、世の中に走っている自動車はすべて批判されるべきです。規制値以下であっても有毒ガスを空気中に排出していることには変わりなく、有毒ガスの発生をコントロールできていないことになります。もちろん有毒ガスが放出される大気は海水と同様に世界中につながっています。コントロールと言うのは、一定の基準(規制値)に従って目的の状態となるよう管理することです。そして外海の放射線レベルが規制値以下であるという目的の状態が実現している以上、現在制御下(Under control)にあるという表現は適正であると思います。また、問題のメカニズムがわからないからコントロールに値しないという主張もありますが、それならば世の中にあるインフラはメンテナンスという意味でほとんどコントロールされていないことになります。重要なのは、事象を観測して情報を得ながら各種挙動のメカニズムを把握して、海洋の濃度が規制値を超えないようにコントロールすることです。そして、そのような状況の中、冷静な判断を阻害するような批判に終始して、日本国民や世界の人々に不必要な不安と風評を与えるジャーナリズムはあってはならないと考えます。なお、東京電力も地上タンクの汚染水漏れについては、さらなる細心の注意を払うべきです。地上タンクを漏洩した汚染水は地表を伝わる可能性が高いので、極めて短時間に海岸に達します。現在のところ南放水口付近の濃度の計測値に有意な変化が認められないため、外洋の放射線濃度に対する影響はほとんどなかったものと考えられますが、マスメディア発の愚かな風評被害をブロックするためにも、管理体制をさらに充実するべきであると考えます。



メモ2013/07/31 9月8000円 東電料金(毎日新聞)


メモみのもんた氏:「じゃあなんていうの、液化できるガスを持って来ようじゃないか。液化すれば運ぶの便利だよ、パイプで。」


外国にある天然ガスを日本で利用するにあたっては次のような二つの方法があります。


(1) まず、天然ガス産出国に莫大な金額で天然ガスを液化する施設を建設して、天然ガスよりも体積が小さい液化天然ガス(LNG)という低温高圧条件下で安定な液体を製造する。この液化天然ガスをタンカーで日本まで運び、莫大な金額で建設した液化天然ガスをガス化する施設で再びガスに戻して使用する。
(2) 天然ガス産出国と日本との間にパイプラインを建設して天然ガスを直接移動する。


そんな中でみのもんた氏が何を言っているかというと、「液化すると運ぶの便利だよ、パイプで」という大笑いしてしまうほどおバカな珍説です。パイプラインで運ぶのであればわざわざ液化する必要はありませんし、液化した天然ガスは高圧低温条件下で液体状態を保っているので仮にパイプラインで運搬するとなると非常に高い剛性をもったパイプが必要となり、考えられないほど高いコストがかかってしまいます。つまり、みのもんた氏はエネルギーのイロハも知らずに「液化」とか「パイプ」とか専門用語を使って、世にも奇妙なことを視聴者に勧めているということです。このような人物やその誤りを指摘できずにうなずいているコメンテイター(片山善博氏、逢坂ユリ氏、野村修也氏)が、上から目線でエネルギー問題の解決策を高らかにテレビで語っているのが現状と言えます(笑)。話は変わりますが、安倍首相とカナダのハーパー首相の会談によって2019年からのカナダのシェールガス輸入が実現しそうというのは日本のエネルギー供給にとってめちゃくちゃ大きいことですね。

メモ2013/08/22 堰の排水弁すべて開放 タンク汚染水漏れ


小松成美氏:今回、国会も閣僚の方も夏休みをもちろんとっていますよね。夏休みももちろん大事なんです。けれどもこの水は毎日毎日流出しているわけですよね。私達が迎えた3月11日?あの時と同じくらいの危機をいま日本は迎えているんだと皆が思ってですね。もう非常事態宣言を発令して手立てを考える。世界中の知恵を集めて。それぐらいのことが必要なんじゃないかと思いました。


小松成美氏が何を勘違いしているかわかりませんが、原子力事故の非常事態宣言である原子力緊急事態宣言が福島第一原発で解除されているとでも思っているのでしょうか?一番緊張感がないのは小松成美氏自身といえると思います。そして、非常事態宣言を発令すれば問題が解決するという論理が真ならば、もうすでに問題は解決しているはずです。小松氏が声高らかに言っていることは希望に訴える論証にすぎません。また、非常事態である中、汚染水対策作業については、国会や閣僚が夏休みをとっても進めることができます。困難な問題を解決したいときに世界中の知恵を集めれればよいというのは誰もがそう思っていることですが、言うだけでは何の具体的な意味をもたないため普通の大人は口にしません。究極のIrrelevant(無意味)な発言だと思います。なお、このようなよくわかっていないスポーツライターに国の重要問題についていい加減に語らせることは、誤った風評を生じさせる大きな要因になると思います。TBSは一刻も早く対策を練るべきだと思います。



メモ2013/09/02 タンク1基に15秒 汚染水漏れ 点検ずさん


みのもんた氏:僕現場へ行って随分見たけれども、検査して発見する発見しないってのも大変な問題なんだけれども、その前にこれからも汚染水は出続けるわけですよ。これからも汚染は続くわけでしょ。どうすんの?


みのもんた氏はもう少し考えて論理的に話すべきだと思います。まさに不合理な結論(non-sequitur)の連続で、いつのまにか最後の結論は「どうすんの?」になっています(笑)



メモ2013/07/17 4電力5原発が説明 安全審査で初会合


野村修也氏:今のみのさんのご発言って言うのは、福島へ行ってあそこの事故の現場を見た人は共通にそう思うと思うんですよね。やはりあの事故の深刻さと言うものを他の電力会社の人達がどのくらいしっかりと感じているのかということが今一番問われていると思うんですよ。その姿勢がはっきりしなければ地元の人は納得が得られないだろうと私は思いますけどね。


みのもんた氏:福島に言って僕が一番びっくりしたのは「はい、4号機と3号機の前は、時速何キロくらいで走ってもいいです。」「なぜですか」「放射線量少ないから」「隣の2号機と1号機の間はすぐ通過します。放射線量が全然違うんです。」「え!」って感じですよ。つけてるカウンターがビーって鳴るんですから。その現状がいまだに続いてるんだよ。


野村修也氏は完璧にみのもんた氏の太鼓持ちをやってますね(笑)。電力会社にはめちゃくちゃ厳しい批判を浴びせている割には、みのもんた氏の不規則発言にはどこ吹く風です。みのもんた氏は、福島原発をたびたび訪れては本質的にまったく意味のない小ネタをつかみ、それをもったいぶって話すことによって印象報道を繰り返しています。野村修也氏は、例えば「現場を見た人は」という枕詞を使うなど、みのもんた氏が嬉しがるようなことをけっして照れもせずに真面目な顔をして語ります。聞いてる方が恥ずかしくなってしまうくらいです(笑)。現場に行かないと物を語れないというのであれば、それは無知に訴える論証です。そして「事故の深刻さをどのくらい感じているかを問う」ということは、極めて曖昧で主観的な判断を含むものであり、言葉の遊びにすぎないと思います。野村修也氏のプッシュの後にみのもんた氏が得意げに話したエピソードは、その後に幾度となくみのもんた氏が語ることになります。カウンターが鳴る現状が「いまだに続いている」ことにみのもんた氏は怒りをぶつけていますが、半減期が2年と30年のセシウムが同量存在する現実を考えれば、その後2年経過しても現在の約75%という状態でカウンターが鳴る状態が「いまだに続いている」ことになると予測されます。そもそも「いまだに続いている」ことは、みのもんた氏が怒らなくとも誰もがわかることです。その都度怒り続けるだけの報道は感情に訴えるだけであり、国民の冷静な判断を阻害します。将来の私達にとって重要なのは、原子力発電所の事故というものを総合的に考察し、今後の意思決定にいかすことであると考えます。



メモ2013/09/04 汚染水対策に470億円投入へ


みのもんた氏:僕ね。違うんじゃないかって素人でも思いますよ。氷の壁を作ってそこに汚染水が流 れ込まないようにするんじゃなくて、汚染水が流れ込むんじゃなくて汚染水が来ないようにする方が大事なんじゃないの?


アナウンサー:いろいろ有識者会議などでいろいろな案を揉んだ上で出てきたのがこの案と言うことにはなりますね。


みのもんた氏:もうちょっと違うこと考えられないんですか?


片山氏:私ね、もう少し早く政府が本腰入れて乗り出して、それでいろんな専門家の英知を結集してそういうものが一番いいのか?っていうそういう手順が踏むべきだったと思いますよね。これが本当に根本的な解決になるとも思えませんので。


みのもんた氏:そうですよね~。じゃあ汚染水が流れ込まなくなる。汚染水はそこで止められるとどこに流れるんですか?


片山氏:だからですよね。もちろんそういうことも考えておられるんでしょうけども全貌が見えないですよね。


みのもんた氏:もうちょっと抜本的なのないんですかね。わかりやすい解決っていうのは。


逢坂ユリ氏:そうですね。今おっしゃった凍土壁って言うのもまだ実験段階なのでどうなるかはっきりわからないってことも報道なんかで読みますし、漁業関係者の方は風評被害でたまったもんじゃないですよね。え~・・・


みのもんた氏:野村さんね。ここに原子力発電所がある。壊れてる。放射能で汚染されている。ここに地下水がどんどんどんどん流れ込んでくる。流れ込まないようにしようって氷の壁造って・・・


野村修也氏:なんとなく発想がですね、本当に根本的な解決に向かってないですよね。さ らに今回のキッカケは、汚染水をためているタンクの問題なんですけれども、今回の計画の中には、タンクを補強するとか、タンクを改善するって言う費用が上がっていないわけなんですよね。ですから目の前にある問題というよりもかなり将来に向かってお金を使うということしか決まっていない。ですからある意味私達が一番心配していることに国費が投入されていないんじゃないかって疑問もあるんじゃないかなって思いますよね。


みのもんた氏:そうですよね~。


(CM)


みのもんた氏:あの~原子力発電所がある。壊れちゃった。漏れてる。どうしようってところに地下水がどんどんどんどん流れ込む。どこから来るんですかね?その地下水ってのは。


片山氏:それは・・・・・・(笑)


みのもんた氏:その元を断つ方が大事なんじゃないかなと思うんですよね。(コメンテイター一同大きくうなづく)素人ってそう思うんだけど違うのかなぁ?


みのもんた氏が言う「汚染水が流れ込むんじゃなくて汚染水が来ないようにする方が大事」の意味がわかりませんが、コンテクストから推測すると、原子炉箇所への地下水の流れ込みを遮断するのではなくて原子炉箇所からの汚染水の流れ出しを遮断する方が重要であるということかと思います。汚染水の流れ出しを遮断するのはもちろん重要なことですが、同時にそのような汚染水の大量発生を生じさせている地下水の流れ込みを止めないと汚染水は現在のペースで増え続けるということです。「2年何カ月たっても場当たり的な対応ばかりで全然根本的な解決がなされていない」と怒りまくるみのもんた氏が、地下水の流入という根本的な問題に背を向けて、汚染水の抑止という対処療法的な処理を優先するように語るのは信じがたいほどの矛盾です。多くの専門家が検討している方策をこういうド素人がはばかりもせずに上から目線で否定してしまうところにマスメディアの大きな問題点があると考えます。コメンテイターの意見も伝聞をもとにしたもので、ただただ根本的な解決に至っていないという批判に終始しています。まず、片山氏は「根本的な解決になるとも思えません」という割には、みのもんた氏からどこから地下水が来ているかと聞かれたら答えられずに絶句してしまいました。一般に地下水のポテンシャル(水位)は標高との相関性が高く基本的に標高が高いところから地下水が流れてくることは高校生でもわかるかと思います。そしてみのもんた氏が言う「地下水の元をたつ」などと言うことが、深刻な地下水障害を引き起こすことを意味するだけでなく、そもそも絶対に不可能であることもわかっていないようです。地下水はグラウトカーテンによって迂回させることはできますが、地形に起伏がある以上、絶対に断つことはできません。いずれにしてもこの程度の質問に答えられないで絶句する片山氏のような人物が根拠なく「根本的な解決になるとも思えません」と発言しているのには本当に絶望してしまいます。逢坂ユリ氏の「凍土壁は実験段階」というのも完全に誤報です。凍土工法はシールドトンネルの掘削時にすでにかなりの実績がある工法です。それとなぜ、凍土工法が風評被害に繋がるのか全く理解ができません。そもそも福島周辺の漁業関係者に対する風評被害に大きく貢献しているのは、シルトフェンス外の海水の放射線レベルが規制値よりも十分に低いにもかかわらず現状を世界的危機のように煽っている「みのもんたの朝ズバッ」というテレビ番組です。野村修也氏も、「根本的な解決に向かってない」といいながら地下水の流入という根本的な問題に背を向けて、タンクの改善という対処療法的な処理を国に求めています。タンクを改善するのは東京電力でもできることであって、国に求めるべきなのは汚染水を増やさないための根本的な対策ではないでしょうか。このように根本的な対策が何であるかをわかっていない人達が、上から目線で根本的な対策をするように求めているのは趣味の悪いジョークとしか思えません。みのもんた氏の最後の発言がこの議論を如実に象徴しています。




この記事をもって「不当な論拠」に関する特集を終了します。