桜宮高校体罰問題(1) | 西陣に住んでます

桜宮高校体罰問題(1)

西陣に住んでます-橋下大阪市長




連日報道されていた桜宮高校体罰問題ですが、

ここにきて一定の結論が出されたようです。


この記事では、

あくまでも論理的な見地からこの問題を見てみたいと思います。



1事件の発覚


この問題が発覚したのは、大阪市による次の発表でした。


メモ大阪市 2013/01/08 10:30
[大阪市立桜宮高等学校生徒死亡事案について]


平成24年12月23日(日)午前6時30分ごろ、生徒が自宅で亡くなっているのが発見されました。すぐに消防と警察に連絡されましたが、その後、死亡が確認されました。
校長に対して早急に事実確認を行った結果、当該生徒は、男子バスケットボール部のキャプテンであること、遺書と自殺の数日前に顧問教諭(保健体育科 教諭 男性 47歳)あてに書いたが実際には手渡せていなかった手紙があること、その手紙には顧問教諭の厳しい指導や体罰があったことやキャプテンとしての責任に苦しんでいたこと等の記載があったこと、自殺前日にも顧問教諭による当該生徒への体罰があったことがわかりました。
現在、顧問教諭・周囲の生徒等の関係者からの事実関係の確認を早急に進めています。
また、生徒、保護者、教職員の心のケアにも努めています。
なお、顧問教諭については、昨年度にも体罰傾向があるのではとの情報が寄せられていましたが、学校の調査では体罰はなかったとの報告を受けていました。
このため、今回の事案の重要性にかんがみ、教育委員とも協議した結果、外部監察チームの協力も得ながら、昨年度の件も含めて調査を進めてまいります。


この発表に呼応して、メディアが次々にこの問題を特集します。


メモ産経新聞 2013/01/08 11:15
[高2男子が自宅で自殺 前日バスケ部の顧問教諭から体罰]

メモ産経ニュース 2013/01/08 14:08
[自殺生徒、顧問あての手紙に記載 制服のネクタイで首つり]

メモ産経ニュース 2013/01/08 22:50
[橋下市長「どんな学校なのか。最悪」 市教委と学校の対応に怒り]


この事件の本質は、この段階で既にわかるのですが、明らかに

「生徒に能力が伴わなかったので体罰を加えた。」

ということです。


この場合、生徒には一切過失はなく、

体罰を望まない生徒に暴力をふるった顧問に明らかな過失があると言えます。

そして、その過失によって生徒が自殺したわけですから、

生徒の死は、教育行政を担当している顧問、学校、市の責任と

言えるかと思います。


このような体罰による教育手法は、

相手が気付かないうちにその心を制御する「マインドコントロール」ではなく、

ハラスメントによる強制力を通して特定の価値観を与える「洗脳」といえ、

民主主義の価値観を持つ日本で選択すべき教育手法ではないと考えます。

そもそも今回の体罰は、体を動かすスポーツの場での行為なので、

問題のポイントがうやむやになりがちですが、本質的には

数学の問題が解けなかった生徒を殴るのと同じ愚劣な行為です。


法律的な観点からも、もともと高校のクラブ活動と言うものは、

教育の特別活動の中の課外活動(桜宮高校体育科では正課?)であり、

スポーツのゲームでこのような体罰を行うことは

学習指導要領に記述されている特別活動の目標↓に明らかに合致しません。


1.心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図ること。
2.集団の一員としての自覚を深めること。
3.協力してよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てること。
4.人間としての在り方生き方についての自覚を深めること。
5.自己を生かす能力を養うこと。


また、自身が名選手であり、早稲田大学でこの問題を研究した専門家である

桑田真澄氏のもこのナンセンスを指摘しています。→[桑田真澄氏の自論]

なお、互いの了解のもとで行われるアントニオ猪木氏の闘魂ビンタとも

異なる性質のものです。



2保護者説明会


事件発覚の翌日、桜宮高校では、保護者説明会が行われました。

この保護者説明会で高校側が一方的に断罪されるかと思いきや、

実際にはそうではありませんでした。


メモJ-CAST 2013/1/10 15:17

[桜宮高校バスケ部主将自殺!]


学校側は9日夜(2013年1月)、保護者を集めて説明会を行ったが、保護者の中からは「先生や学校だけを責めるのはおかしい」という声もあったという。説明会に出席した保護者によると、「(校長が)語気を荒げて『体罰は一掃する』といっていたが、一掃されるでしょうか。クラブは弱くなりますよね。『先生や学校だけを責めるのはおかしい』と擁護するような意見があり。これには拍手もあった」という。


メモNNNニュース 2013/01/10

[高2自殺 厳しい意見の一方、擁護する声も]

保護者「僕も卒業生。正直、僕らの頃はもっと厳しかった。先生だけの責任じゃなくて、親の責任だと思う。友達を作ることも大事ですし、そういう友達がいたら、手を差し伸べるように言ってやるのも親の役目。先生はこれからも大変だと思いますけど、頑張ってください。僕は応援します」


これらの報道から桜宮高校の保護者卒業生の中には

明らかにスポーツ指導における体罰を容認している人物がいることが

わかります。


「体罰を一掃するとクラブが弱くなる」というのは勝利至上主義であり、

アマチュアの人材育成主義とは合致しないものです。

「先生や学校だけを責めるのはおかしい」というのは、

誰を責めるべきなのか明確にすべきです。

「先生だけの責任じゃなくて親の責任だと思う」というのは、

究極の暴論であると考えます。



3部活動自粛


橋下大阪市長は市行政の責任者として遺族に謝罪しました。

市長はこの謝罪に際して気になる情報↓を提供しました。


メモ毎日新聞 2013/1/12 19:41

[大阪・高2自殺:「釈明の余地ない」橋下市長が遺族に謝罪]

生徒の自殺後、学校が実施したバスケ部の生徒と保護者へのアンケートの回答に「試合を早くしたい」「顧問の指導を受けたい」などの言葉が並んでいたことを明らかにし、「ちょっと異常。冷静になってほしい」と呼び掛けた


この報道から

生徒と保護者の一部には事の重大性がわかっていない人物が

存在していることがわかります。

そんな中、桜宮高校は部活動自粛を決めました。


メモ読売新聞 2013/01/13 23:06
[高2自殺の桜宮高、すべての部活動を当面自粛]


大阪市立桜宮高校バスケットボール部の2年男子生徒(17)が体罰を受けた翌日に自殺した問題で、同高は13日から当面の間、すべての部活動を自粛することを決めた。佐藤校長が、生徒の命が失われた事態や体罰の一斉調査が入ることなどを考慮し、自粛する意向を市教委に伝え、了承された。


桜宮高校が、問題をもつ教育機関である以上、

外部評価委員による外部評価とそれに基づく自己点検評価を行うのは

喫緊の課題であると考えます。

私は教育が原因となって死者が出た高校については、

複数の外部評価委員による外部評価を義務付けるような法律整備が

高等学校設置基準において必要であると思います。

このような外部評価に基づく厳格な認証評価を実施することが

今回のような教育問題を解決するファーストステップになると考えます。



4橋下市長による入試中止の提案


橋下市長は、桜宮高校の体育科の受け入れ態勢が整うまで

体育科とスポーツ健康科学科の入試中止を市教育委員会に

申し入れました。


メモ産経新聞 2013/01/15 21:52
[橋下市長、体育系2科の入試中止申し入れ 大阪市教委は難色]

橋下徹市長は15日夜、市役所で緊急会見し、市教委に対し、今年度実施予定の同校体育系2科(体育科とスポーツ健康科学科、定員計120人)の入試を中止するよう申し入れたことを明らかにした。

そんな中、多くの反対意見が大阪市に寄せられたようです。


メモ産経新聞 2013/01/16 14:05

[橋下市長の体育系「入試中止」に賛否 大阪市教委に電話殺到]

桜宮高を受験しようとしていた保護者から「子供といっしょに受験の準備をしていたのに、今さらそんなことを言われても困る」といった意見があったほか、「なぜ子供の夢を奪うようなことをするのか」という批判の声が多く寄せられた。一方、一部ではあるが、「市教委はなぜ市長が言うことに反対するのか」という、橋下市長に賛成の意見もあったという。


桜宮高校を受験する予定であった中学生にとって、

もし入学試験が中止になったら大問題であることは確かでしょう。

体育の先生を目指す生徒達には、

市立高校の体育科の存在は魅力と言えるかと思います。

ただし、桜宮高校の入試が2倍を超える倍率であったことを考えると

もともと狭き門ではあったようです。

「子供の夢を奪うようなことをするのか」と言う意見については、

必ずしも当たらないかと思います。

暴力教師の存在が認められているような高校に入学することは

必ずしも子供のためにはならないと思います。

受け入れ体制が整わない学校に入学することは

それ自体、大きなリスクを伴うことになります。


さて、反対意見に耳を傾けることなく、

橋下市長は校長や教員の総入れ替えも入試実施の条件とします。


メモ産経新聞 2013/01/16 21:28

[橋下市長、普通科入試も「校長や教員の総入れ替え」が条件]

橋下徹市長は16日、市教委に同校普通科の入試実施についても最低条件として「校長や教員の総入れ替え」を求めた。市教委幹部が明らかにした。


体罰を行っていた教師とそれを結果的に認めていた教師を

教育のプラットフォームから退場させることは

極当たり前に行われている社会的制裁措置であると思います。


ただ、そんな社会通念上の常識的措置も在校生には効かないようです。


メモ産経新聞 2013/01/17 08:28

[「橋下市長は分かっていない」募集停止に在校生から悲鳴]

同校の生徒らからは「やりすぎ」「橋下市長は分かっていない」と反発の声が上がるなど、波紋が広がっている。「先生の体罰は問題だけど、生徒はみんな一生懸命だった。橋下市長は分かっていない」“橋下批判”を口にするのは同校普通科の女子生徒。この女子生徒は「体育科への進学を希望していた中学生がかわいそうだ」と後輩が“とばっちり”を受けることも指摘する。渦中の体育科の生徒からも批判的な意見が聞かれた。体育科1年で剣道部に所属する女子生徒(16)は「体育科は学校の特色で大事な存在。予定通り入試をしてほしい」と話す。続けて「部活動も活動停止になりみんな困っている。生徒は悪くないはずなのに」と戸惑った表情を浮かべた。


よく現場にいない人間が現場に口出しするのはよくない

という議論がありますが、

それは専門的な知識が必要な問題の場合であり、

このようなカルト的な洗脳を伴った閉ざされた世界の事案については、

外部の人間の論理を重んじた方がよいのと考えられます。


桜宮高校の在校生の一部は、不幸にも理性をなくしています。

「生徒はみんな一生懸命だった」から、あるいは

「生徒は悪くないはずなのに」から募集停止はおかしいという

不当な根拠によって立論しようとする論点相違の誤謬を展開しています。

生徒がみんな一生懸命頑張って悪くなくても

指導をする先生が悪ければ募集停止が必要なことを

認識して発言すべきです。

また「体育科は学校の特色で大事な存在」だから

「予定通り入試をしてほしい」というのも論点相違の誤謬ですし、

さらに「部活動も活動停止になりみんな困っている」というのは

論証の体をなしていません。


不適切な教員が指導するシステムに組み込まれたことは不幸ですが、

客観的に後輩のことを考えるのであれば、

入試中止を賛成すべきなのではと思います。



5明らかにされた初期の状況


この問題が徐々に大きな社会的な問題となっていく中で

生徒の自殺直後の状況が明らかになってきました。


メモ日刊スポーツ 2013/01/18 12:21
[桜宮高校長が遺族に大会出場の是非聞く]


大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の男子生徒自殺で、橋下徹市長は18日、生徒が死亡した4日後の先月27日、同校の佐藤芳弘校長が遺族を弔問した際、「新人戦に出てもいいか」と大会出場の是非を聞いていたことを明らかにした。市議会委員会の協議会で答弁した。

事件が顕在化する前、校長は事の重大性がわかっていなかったことが

証明されてしまったようです。


メモ産経新聞 2013/01/19 12:00
[涙して擁護するOBもいる桜宮バスケ部顧問の「素顔」]


「生徒が亡くなったので全面的に擁護はできない。でも、体罰の裏側には愛情があった。先生が暴力教師のように報道されていることに納得がいかない」約10年前に顧問から指導を受けていた同校OBの男性は現在の職場で取材に応じ、無念さをにじませた。(中略)
同校を“常勝校”へと育て上げる中で、顧問は生徒にたびたび手をあげていたが、長年、部内や学校で問題になることはなかった。保護者の1人は「下級生は決してたたかず、上級生をたたいていた。気合をいれるためだと理解している」と話す。OBの1人も「先生にたたかれたときは、練習に身が入っていないなど自分自身に問題があった。先生からはフォローもあり、うまくいったときには『おめでとう』『ようやった』と声をかけてくれた」と振り返る。現役部員も顧問への尊敬の念を言葉にする。「先生はバスケの指導がズバ抜けていたが、高校生としてどうあるべきかを教えてくれた。それは人としての気遣い。道を聞かれたら教えるだけじゃなく、一緒についていってあげるとかを教えてくれるような人だった」(中略)

12月24日夜に行われた生徒の通夜。唇が切れた生徒の遺体を前に、母親は顧問に「これは指導か、体罰か」と問いただした。顧問は消え入るような声で「体罰です」と数回繰り返した。顧問は立っていられない状態で、校長らが抱きかかえて退出しようとしたが、顧問はそれを振り払って土下座した。校長らも一緒に土下座した。「マスコミは先生やバスケ部の真実を知らないまま報道していて許せない」。こうした事態にOBの1人は大泣きしながら訴える。OBの中には、顧問に対する処分軽減を求める嘆願書提出を検討する動きも出ている。


この顧問による洗脳の奥深さがわかる記述です。

「体罰の裏側に愛情があった」とするのは、

あくまでこのOBの主観でしかありません。

「顧問は生徒にたびたび手を上げていたが、

長年、部内や学校で問題になることはなかった」というのは、

問題がなかったから暴力は許されると言う

これも論点相違の誤謬のインプリケイションであるかと思います。

また、「下級生は決してたたかず、上級生をたたいていた。

気合をいれるためだと理解している」と保護者の一人が言うのも

「先生にたたかれたときは、練習に身が入っていないなど

自分自身に問題があった。」とOBの一人が言うのも

この顧問が自殺した生徒に行った行為を

けっして正当化するものではありません。

最も恐ろしいことは、こういった集団が一つのコミュニティーを作り、

その構成員によって同じような体罰教育が是認されたり、

現在も教育の現場で体罰が行われているかもしれないことです。



メモメモメモメモメモ



以上がこの問題の前半の経緯です。


私は、教員が生徒が最高のパフォーマンスを発揮して勉強ができるように

マインドコントロールすることは重要なことであると思っています。

ただ、暴力を伴って洗脳することはけっして許されるものではないと

考えます。


今回の桜宮高校の事案は、カルトによる洗脳のパターンとよく似ていて

体罰を行った顧問を擁護する一つの閉ざされたコミュニティーが形成され、

その根拠として論点相違の誤謬が多用されているのが

最も危険に思うところです。


次の記事では、入試中止が決定された前後の

この閉ざされたコミュニティーの挙動を詳しく見ていきたいと思います。