インドネシアの自然災害を見てきて・・・
（合衆国地質調査所 大型地震の震央マップ）
日本社会に未曾有の被害を与えている東日本大震災・・・
ちょうどこの地震があった時、本当にたまたまなのですが、
私はインドネシアを旅していました[→記事] 。
私がこの時に滞在していたのは、
数々の火山の土石流災害や大規模地震災害に見舞われている
ジャワ島の古都ジョグジャカルタという都市でした。
たまたま、インドネシアの最高学府と呼ばれるガジャマダ大学の
応用地質学を専攻している先生に知人がいて、
その先生方とジョグジャカルタ近郊の自然災害の現場を巡るという
普通じゃ考えられない幸運に恵まれました。
ところで、インドネシアのジャワ島は
日本と同じように地殻のプレート境界に位置しています。
（合衆国地質調査所 プレート境界と活火山マップ）
日本もインドネシアも典型的な
島弧(iskland arc)‐海溝(trench)系という地形・地質状況となっていて
プレートのリバウンドによるプレート型地震＆津波（スマトラ島沖地震2004）
内陸部のひずみの開放に伴う直下型地震（ジョグジャカルタ大地震2006）
火山噴火に伴う火砕流＆土石流（メラピ火山噴火2010）など、
東日本大震災、阪神大震災、雲仙普賢岳噴火などとそれぞれ同種の
大自然災害が発生しています。
（合衆国地質調査所 島弧‐海溝系の概念図）
今回私が見てきたのは、
まず2010年10月22日のメラピ火山の噴火に伴い、
豪雨のたびに現在進行中で発生している土石流災害です。
土石流災害というのは、
火山噴火に伴って火山の上部に堆積したルーズな噴出物が
豪雨によって川に流れ込み、下流域を土砂で埋め尽くすというものです。
人家が埋まってしまったり、
橋が流されてしまったり、
高温の噴出物も流れてきている状況です。
↓こちらはオーストラリアが被災者に対して迅速に寄付したテントです。
今でも700人くらいの人が住んでいるとのことです。
さて、この土石流災害は現在も進行中で、
その影響は川の下流にあるユネスコ世界遺産にも迫っています。
その世界遺産というのは、西暦850年位に建立されたヒンドゥー教寺院の
プランバナン寺院群（Prambanan）です。
インドネシアでも有数の重要遺跡です。
この遺跡のメインのビルディングが↓こちらのシヴァ寺院です。
実は、このシヴァ寺院は、
2006年のジョグジャカルタ大地震によって内部に多数の亀裂が生じたため、
一般の観光客は現在も内部に入ることができなくなっています。
今後もいつ内部に入れるようになるか見通しが立たないということです。
そんなシヴァ寺院の内部に、
私は特別にガジャマダ大学の先生方と一緒に入ることができました。
ちなみに、今回同行したガジャマダ大学の先生方は、政府の依頼で
この建物の内部を定期的に観察調査しているということです。
内部に入ってみると、建物には多くの亀裂が走っていて、
多くのブロックが水平方向に大きく変位していました。
大きなクラック（亀裂）の箇所には、変位計が取り付けられていて
自動計測されています。
ガジャマダ大学の先生に
時間とともにどのような変位があるのか質問したところ、
顕著な変位は現在のところ生じていないとのことでした。
そして、なんとこの計測を行っているのは
日本の筑波大学のチームということでした。
日本の技術はこのようなところでも役立っているのですね。
なお、この建物内には東西南北の４方向に４つの部屋があり、
ヒンドゥー教の４神の彫像が安置されています。
幸いこれらの彫像には現在のところ被害はないようです。
真っ暗な中のピンボケ写真で恐縮ですが、
いつまた見ることができるかわからないものですので、
ここに紹介したいと思います。
北 シヴァ（破壊神）／東 ドゥルガー（シヴァの妻）
南 アガスティヤ（シヴァの先生）／西 ガネーシャ（シヴァの子）
シヴァはヒンドゥー教の重要な神で、
日本では七福神の1人の大黒天と同一視されています。
なお、建物の外部の彫像もおおむね被害はないものと思われます。
以上、インドネシアの自然災害の例をいくつか紹介しましたが、
時間が経過しても、完全に復興できていないところが悩ましいところです。
ガジャマダ大学の先生方も、いつ復興できるのか悩まれていました。
そんなときです。
日本の本州で大地震があったという知らせが入ったのは・・・
その後の状況はこちらの記事に書いてあります→[記事]
次回以降は、
再び震災に関連した電力需給関連の記事を
科学的見地から定量的に書いていきたいと思います。