明治2年正月3日に明治政府に衝撃

が走る。

参議の横井小楠が御所帰途、暗殺

される事件が起こる。

 

横井小楠(新政府登用)

横井小楠(1809-1869)は肥後(

熊本)藩士で実学党の領袖。

慶応3(1867)年12月朝廷から新政

府に登用したいと京都の熊本藩邸に送

られる。

藩内では、小楠の登用に異論多く、家

禄召し上げ・士籍剝奪の身で登用を断

る。

岩倉具視は3月小楠に上京の命令を出

し、小楠は士席を回復し、閏4月に京

都に入り参与に任じられる。

新政府と「王政復古(神道)」

明治元(1868)年の新政府「准勅祭

神社」。

6月13日吉野の蔵王権現(金峰山寺)

を神号に改めるように新政府が命じる。

以後、各地の権現が同様の指示を受け

る。(家康神号「東照宮権現」)

7月10日 東・西本願寺など五寺院

が「ヤソ教防御」の上申書を政府に提

出。

10月武蔵国一宮の氷川神社に明治天皇

自ら行幸し復古を啓示。

11月8日「新都の鎮護と万民の平安」を

掲げ、祭事に勅使を派遣する特別の神社

10社(「准勅祭神社」)を選定。

 

 

「横井小楠殉節地」(京都市中京区寺町丸太町下ル)

 

横井小楠暗殺事件

翌年明治2(1869)年1月5日

新政府の参議・横井小楠が御所参内の

帰途、御所堺町御門の堺御門東南で、

十津川郷士6人の襲撃を受け暗殺され

る事件が起こる。

横井小楠襲撃者は6人、計画に加担し

た者が7人。

襲撃者と協力者

小楠襲撃者の6人。

上田立夫(石見、指揮者)、柳田直蔵

(大和郡藩)、前岡力雄(十津川郷士

)、鹿島又之丞(美濃)、津下四郎左

衛門(備前・郷士)、中井刀根男(十

津川藩士)

計画に加担した者7人。

上平主税(十津川、事件首謀者)、

中瑞雲斎(岸和田藩・郷士)、小和野

監物(大和、郷士)、金本賢藏(出雲

)、塩川広七(武蔵・神職)、谷口豹

斎(公卿広幡の家来)、宮太柱(備中)

暗殺理由と新政府「政策」

暗殺理由は斬奸状によると、「天主

教(キリスト教)を国内に蔓延させ、

日本の文化伝統を壊す」ためとあり、

神道を尊ぶ尊王攘夷論者らが横井を

襲撃に及ぶ。

ところで、「悪だくみは数えきれな

い」とする政策は明治元(1868)

年正月に「対外和親の詔(みことの

り)」を表明し、2月末明治天皇が

外国公司と謁見をし、3月に掲示し

た「邪宗門(あやしげな宗教)」禁

止の高札を外国側の抗議を受けて撤

去したことを指し、「キリスト教を

布教する売国の姦なので天誅を加え

る」という。

これらの政策は小楠が参与になる以

前のもので、暗殺者らは新政府の政

策を危惧し、横井平四郎(小楠)暗

殺というかたちをとる。

当時、犯人に同情の落首がでまわり

政府内部でも海江田信義はじめ刺客

助命運動が展開される。

ながびいた裁判は同年明治2年10月

実行犯6人処刑、協力者7人、その

内3人が流刑、4人が禁固刑に確定す

る。

横井小楠と天授庵

熊本藩主・横井小楠の墓所は京都南

禅寺塔頭の天授庵にある。

天授庵は開租を祀り、肥後初代藩主

になった細川忠興(ガラシャの夫)

により再建される。

 

 

南禅寺塔頭の天授庵(京都市左京区南禅寺福地町86-8)

 

横井小楠の墓所には、小楠の子孫の

墓、あわせ、墓所が朝廷から下賜さ

れるに至るまでの由来記、遭遇の摘

録の銅板などがある。

銅板の碑(墓の手前左)には、横井

小楠の遭難当時の状況が不明では忍

びずとあり、当時の太政官日誌

録(大正19年10月有志者)。

 

 

左より「銅板の碑」、「横井先生配矢嶋□□」(中央左)、

「沼山横井先生の墓」(中央右)、「虚心見理」(右端)

 

横井小楠暗殺の報が熊本に伝わった

とき、この事件を快挙とする人々が

いた。

小楠遭難7年後の明治9年に熊本で対

照的な事件、「熊本バンド(結盟)」

と「神風連の乱」が起こる。

「熊本バンド(結盟)」はキリスト

教の教えを「皇国にしき、大いに蒙

昧を開かん」と青年らが京都の新島

襄の同志社に進む。「

神風連の乱」は林桜園の神道の思想

のもとに敬神・古代神政の実現を目

指し、廃刀令を契機に、武装蜂起す

る。ふたつの事件に共通してい

るのは宗教的な考えのもとに行動し

ていることである。

 

 

 

横井小楠の妻・つせ(矢嶋家)は、

徳富蘇峰の母の妹になる。

若王子山頂の同志社共同墓地には、

新島襄、横井小楠と縁戚の富家

(蘇峰、蘆花)、また山本家(覚

馬・八重、久栄)の墓がある。

 

  横井小楠

    |ーーーー長男・(伊勢)時雄(同志社大学社長)

|ー(矢島)つせ       │

|         (山本)みね(父山本覚馬・覚馬の妹・八重)

|

|ー矢島

    |

   │―徳富蘇峰・蘆花

   │

  徳富

 

2021.5.24

幕末の京都ー木戸孝允と大村益次郎ー新京都物語(266)

2021.6.15

明治天皇ー白峯神宮(「怨霊鎮め」ー新京都物語(267)

2021.6.16

明治天皇と崇徳帝遷都ー直島と白峯神宮ー新京都物語(268)