喜多川歌麿が描く枕絵の艶本

「葉男婦舞喜」。

歌麿の多色摺画で卷末ごとに

十辺舎一九の艶笑小話がある

3巻物。

享和2(1802)年に刊行。

 

「葉男婦舞喜」(中巻)

中巻「葉男婦舞喜」(はなふぶ

き)」には歌麿の画が7枚、絵に

は歌麿の書き入れがあり、内最

初の2枚(1、2)と5図を記す。

 

 

男と女、覗く女。

 

 

(覗く女)

このうちのよふに、よるもひるも

とぼしつづけるうちもねへものだ。 

とんと金まら善三さんのうちをミ

るようだ。

米やのとなりへでもこして

つきくらでもすればいい。

(女)

だれかおもてできいているよう

だが

ぬれぬさきこそつゆ

おもいとへもうこう

からみついちゃァ

かみなりさまが

おいてもはなしはしねへ。

(男)

もっと ぐっとしたをながくだし

やおもいきり きれるほどすうから

よ。

 

夫と女房

 

 

(夫)

アゝいい ウゝいい 〱

アゝ さアさァ 〱

さア 〱

日本ごくが ひとつになって

身うちがとけて

にご里になるようだ。

その煮ごりで、おまんまをく

ふより 

うまい 〱 うまいゝ アゝ

いく

それいい、いい 〱  いい

〱。

(女房)

エ ゝ ふるへのくるほど

いいぞ 〱

ア ゝ いまがかんじんのと

ころだ。 

もっと つきこんで アレさ

〱 

それさ 〱 そこでさ 〱。

 

 

夜の雨の女と男

(女)

志っぽりと ぬれたどうしという

ハこのこった

アゝ いい 〱 おうさ 〱

そこざ 〱  ウゝゝ 〱

(男)

志りからさきのよるのあめ

ひとつまつの まつたけは

また うまミも ちがふだろふ。

それ  〱  どうだへ 〱

おめへの ぼぼも

ひろいいよふで せまい。

よこに くるまへねて 二ち

ょうとばした

 

 

喜多川歌麿と女性(偃息)

美人画で知られた艶本に登場する

女性。

枕絵はかつて偃息(おそく)図と

呼ばれ、寝転んでやすむを意味し、

歌麿が描く女性は艶(なまめ)か

しく、愉しみ、くつろいでいる。

 

山東京伝(1761ー1816)は「

絵本枕言葉」(天明5年・1784年

刊行)の絵の書き入れで、太田南

畝(狂歌人・蜀山人)、蔦屋重三

郎(版元)そして喜多川歌麿(絵

師)について記す。

モウあやまり 〱 よくふくれるやつの

 こふいふ所をうた丸にかゝせてへ

 

歌麿(?ー1806)の号は「うた

丸」。生年、出生地、出身地は不

明。

歌麿は、寛政の改革で太田南畝、

蔦屋重三郎、山東京伝とともに刑

を受けこれがもとで亡くなる。

この4年前に描いた「葉男婦舞喜」

は、歌麿最後の艶本となる。

 

 

 

2021.4.27

山東京伝(枕絵本「艶本枕言葉」)ー男と女の物語(120)

2021.4.28

喜多川歌麿「葉男婦舞喜」ー男と女の物語(121)

2021.4.29

喜多川歌麿(艶本「葉男婦舞喜」)ー男と女の物語(122)