美人画で知られた喜多川歌麿。

歌麿が描いた艶本(えほん)があり、

当時、画期的であった歌麿の浮世絵春画「歌まくら」。

 

<浮世絵春画「歌まくら」>

江戸でおこった浮世絵。

浮世(うきよ)とは、仏教でいうこの世で、

男と女の艶っぽい「歌まくら」の物語を撰する。(「艶歌枕撰」)

全12図のうちの第10図。

 

<「歌まくら」第10図(「あがなう女」)>

第10図の「歌まくら」の女。

 

 

            「歌まくら」第10図(「あながう女」)

 

毛深い男が娘を襲っている。

娘は男に抵抗。坑(あな)がう女を描く歌麿。

全12図の内、唯一、書き入れ(セリフ)が、娘と男の横にある。

歌麿が描く、あながう女の相。

眉、眼つき、口がすさまじい。

男のまらに巻き付き垂れ下がった女の薄い橙帯。

その帯の横には娘の若いおぼぼがある。

必死に男の顔に手を押しつける娘。

娘「此、利兵衛じじいめ、よしやァがれ」と。

 

 

毛深い男。

男が膝をつき、あながう女の足首をもち、顔をしかめながら

男「なんといわれても、一ばんしさいすればよいじゃ」

とある。

 

<「歌まくら」(第11図・第12図)>

 

 

  第11図(「太った女房」)     第12図(「カピタン夫婦」)

 

第11図(「太った女房」)

歯を黒く染めた太った女房。

伽のあと夫の夜着をかけている。

第12図(「オランダ商館長夫婦」

オランダ人のカピタン(商館長)夫婦を描く。

 

艶歌枕撰(メモ帖)ー浮世絵春画ー

浮世絵「歌まくら」は、版画である。

錦絵とよばれる美しい多色摺木版画で、

春画は男女のからみあう姿態を描いている。

絵師が版下絵をかき、彫師が版下絵を版木に彫り、

摺師が紙に摺り、作品を仕上げてゆく。

将軍・吉宗のとき、風俗書の取り締まりがおこなわれ、

艶本や枕絵は非合法の出版となる。(享保7年・1722年)

「歌まくら」は天明8(1788)年の作で、寛政の改革で

出版統制がさらに強化され、蔦屋重三郎は、身上半減の

重科料に処せられる。(寛政3年・1791年)

歌麿を世にだした蔦屋重三郎は、歌麿より3歳上で、

48歳でなくなる(1797年)。

蔦重、歌麿の作品を追うように幕府が規制し、

これにあながうが如く、浮世絵を描きつづけた歌麿。

文化元(1804)年に秀吉を題材にした「絵本太閤記」が

幕府の目にとまり、三日間拘留後、50日間手鎖の刑に

処せられ、歌麿は二年後に永眠。(文化3年9月20日)

 

2020.7.8

「歌まくら」の女ー「艶歌枕撰(艶本)<5>ー男と女の物語(60)