幕末から維新。
移り変わるこの時に生きたふたりの侠客、
会津小鉄と小林佐兵衛。幕府のもとでは
たらき、ともに明治維新をむかえる。
会津小鉄（1833-1885）
会津小鉄こと上坂仙吉（せんきち）。
仙吉は母が織物商の娘で、父は水戸藩士で
帰参し、大坂島之内で、私生児として生ま
れる（天保4年・1833年）。
両親知らずに育った仙吉は、江戸に出て、
安藤家の雑用係（仲間・ちゅうげん）とな
り、その後京都にゆき、大垣屋清八に見込
まれ、金戒光明寺の会津藩の仲間（ちゅう
げん）として働く（嘉永4年・1851年）。
のち二条新地大文字町に一家を構えていた
とき。文久2（1863）年12月に会津藩が
京都守護職として入京してくる。
このときに小鉄は会津藩武家屋敷の片腕と
して迎えられ、小鉄は、池田屋事件、禁門
の変（慶応元.1865年）に協力する。
その後小鉄は木屋町の茶屋で襲われ、仇の
浪人を殺したために入牢するが、会津藩に
より助命されている。
慶応4（1868）年正月の鳥羽伏見の戦い。
このとき小鉄は子分500人を動員し幕府と
ともに戦うが、会津藩は大坂へ敗走。
京に戻った小鉄は、鳥羽伏見に戦死した会
津藩士の遺体115人を、子分とともに、金
戒光明寺の塔頭西雲院の墓地まで運んで埋
葬し、さらにその遺品を官軍のいる会津若
松に潜入し届けた。
維新後の小鉄
博打により逮捕され、禁錮10月の刑を宣告
され入獄する（明治16年）。
出獄のとき、洛北白川村の自宅に7000人が
祝いに訪ねた（明治17年）。
翌年、明治18（1885）年3月19日に会津小
鉄が永眠、享年53歳。
小鉄の墓は、金戒光明寺西雲院の境内にある。
京都守護職会津藩の本陣・金戒光明寺（京都市左京区黒谷町121）
小林佐兵衛（明石屋万吉）
会津小鉄が亡くなった本葬（3月21日）に
は、大阪北消防頭取の小林佐兵衛はじめ、
1万3000余人の会葬者が集まったという。
維新前夜
幕末の侠客小林佐兵衛（1829-1917）は、
小野藩一柳家にかわり、大阪湾の出船入船
を検分する川口の御番所を任せられていた。
このとき、万吉一家（通称北の赤万）は会
津小鉄との北瓢箪を印に警護する。
大坂細見細図（1845年）の安治川の御番所（黄色）
維新後の佐兵衛
時代が将軍・徳川から新政府になり、佐兵
衛は、御堂の長州藩の屯所で、首を切られ
るところ、川口の賭場で見逃し助けた桂小
五郎（のちの木戸孝允）に一命を助けられ
る。
維新後
桂小五郎と同期（江戸練兵館道場）の渡辺
昇（第4代知事）に頼まれた小林佐兵衛は、
明治6年に大坂府内の消防北大組頭取とな
り、自宅には貧民救助所（救い小屋）を置
いていた。
明治18年に京都の会津小鉄の本葬に参る。
同年6月淀川が氾濫し、枚方からの下流の
左岸堤防が決壊してゆき、淀川界隈が大き
な被害をうけた。
このとき、多数の罹災者をだすが、佐兵衛
は、多くの人々を救助し、収容をしている。
同年12月、佐兵衛は、私財を投じて、小林
授産場をつくる。
会津小鉄と小林佐兵衛
高野山の小林佐兵衛墓所には、佐兵衛の
「侠骨碑」があり、消防殉職者の慰霊の
碑が建立されている。
高野山の小林佐兵衛墓所の「大阪各消防者精霊供養塔」
墓所の入口の佐兵衛記念碑の右には、大
きな瓢箪の石碑があり、「北小林 若中」
とある。
瓢箪は縦に半分に割られている。万吉一
家（通称北の赤万）は、伝安一家の縄張り・
尻無川を借り、会津小鉄と瓢箪を半分に割
り、その北瓢箪を印に警護していた。
会津小鉄と小林佐兵衛は、幕末の似た時期、
生い立ちのなかで侠客となり、昭和の戦後
初代京山幸枝若によって、ふたりは、浪曲
のなかで歌にうたわれ、知られるようになる。
2019.11.13
小林佐兵衛の物語（「河内音頭」・「浪華遊侠伝」）＜1＞ー新大阪物語（700）
2019.11.15
2019.11.16
浪花侠客小林佐兵衛（「明石屋万吉」）＜3＞ー新大阪物語（703）
2019.11.27
森之宮公園（紅葉）と洪水（「洪水記＜3＞」）ー新大阪物語（712）
2019.11.25
大阪の桜之宮と藤田伝三郎（「網島御殿」）ー新大阪物語（711）
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大阪の堂島（「米会所」）と侠客明石屋万吉＜4＞ー新大阪物語（713）
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2019.11.30
大阪の天満ー池上雪枝（「感化院」）と小林佐兵衛（「授産場」＜6＞） ー新大阪物語（715）
2019.12.1
大阪の消防と侠客小林佐兵衛（「大坂北小林」＜7＞）ー新大阪物語（716）