第57回「まんぷく」(「武士の娘の娘」第10週)。
萬平さん(長谷川博己)は手榴弾で、
反乱の疑いありと、進駐軍に、留置されることになる。
福ちゃん(安藤サクラ)は、商工会議所の三田村亮蔵(橋爪功)
に、なんとかならぬかと相談する。が、弁護士をつけても、
どうも難しいようだ。
福ちゃんは、「希望は捨てません」という。

ー安藤百福と脱税事件ー
「まんぷく」の舞台は、大阪南部の泉大津。
萬平さんのモデルは、カップラーメンの発明家の安藤百福。
彼の「私の履歴書」の自伝による。

イメージ 4昭和23年、クリスマスの夜、百福の経営する貿易会館でのGHQ(連合国軍総司令部)の大阪軍政部長転勤の送別会のとき、府知事の赤間文三、大阪商工会議所会頭杉道助を招き、会がおわり、会館から出るとき、二人のMP(米国陸軍MP)が両側から抱え込み、ジープに押し込められる。
容疑は脱税である。
泉大津の若者に支給していた奨学金が所得とみなされ、源泉徴収して収めるべき税金を収めていないという。
大阪の軍政部で裁判が開かれ、「四年の重労働」という判決が出る。



泉大津の家も工場も、百福名義の不動産は没収され、
身柄は、巣鴨プリズン(東京拘置所)に移される。
巣鴨には、戦争犯罪の容疑やパージで逮捕された政治家、
財界人らが収監されていた。
このとき、面識のあった岸信介とともに、偶然一緒になる。
以後、百福は妥協を拒み、訴訟を継続したが、
家族の生活を考え、訴えを取り下げ、これと同時に、即時放免
となり、2年ぶりの一家だんらんとなる。

安藤百福と人との縁ー人とひとの縁ー
人とひとの縁は不思議である。

ー大阪商工会議所会頭・杉道助ー
福ちゃんが相談する会頭のモデルの杉道助。
戦後の大阪経済の立て直しをした杉道助は
山口出身で、曽祖父が吉田松陰の父・杉常道で、
祖父は松陰の兄の杉民治である。

ー杉道助と井上薫・久原房之助ー
杉道助は慶応大学卒業後、井上薫の側近に勧められ、
久原財閥の久原房之助の久原鉱業所に勤める。(1909年)
のち、船場の綿糸問屋八木商店の養子となる。

ー久原房之助・藤田伝三郎と安藤百福ー
久原房之助は藤田伝三郎の兄。
山口県萩に生まれ、「鉱山王」と呼ばれ、日立財閥の創始者で、
第一次世界大戦後に、実業界から政界に転じ、
「政界の黒幕」といわれる。
戦後、百福が途方にくれたとき、久原房之助のアドバイスで、
百福は大阪駅、心斎橋の不動産・土地を買う。

ー安藤百福と田中龍夫ー
久原房之助に田中龍夫の選挙資金の支援をたのまれる百福。
田中龍夫は、山口県知事をへて、衆院議員になり、
百福はかれを通して、佐藤栄作、福田赳夫ら
歴代の宰相と親交をもつ。

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京都東福寺東隣・鳥羽伏見防長戦没者墓の佐藤栄作・田中龍夫の記念植樹碑

ー安藤百福と佐藤栄作ー
当時、運輸省鉄道局長であった佐藤栄作にたのまれ、
泉大津の旧造兵廠跡を無償で貸与され、
仕事あふれた若者の面倒をみることになる。

ー安藤百福と岸信介ー
百福が巣鴨であった岸信介(1896-1987)。
太平洋戦争の開戦のときの重要閣僚で、A級戦犯
被疑者として3年半拘留され、不起訴のまま無罪放免される。
首相として、60年安保を乗り越える。
「昭和の妖怪」と呼ばれ、佐藤栄作の兄。
長女・洋子は安倍晋太郎に嫁ぐ。洋子の次男は
内閣総理大臣安倍晋三で、三男は、政治家岸信夫。

参考(メモ)
ー大村益次郎殉難碑と杉道助ー

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               大村益次郎殉難碑

戊辰戦争後、兵部大輔に就任した大村益次郎は、
大阪に軍事施設を建設する計画をたて、
農兵論(国民皆兵)を主張し、旧武士の反感大きく、
京都の宿で、刺客に襲われる。大阪の病院に
移り、オランダ医師ボードインの治療を受けるが、永眠。
昭和14年に大村卿顕彰会が建設を大阪病院に決定し、
昭和16年に竣工する。
賛同者に、軍人・東条英機、財界・杉道助はじめ多数あり。

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12月4日