昭和初期の戦時下から終戦の東京を舞台にした
山田洋次監督の映画「小さいおうち」を観ての感想です。
 
映画は女中のタキ(倍賞千恵子)さんを通して
小さいおうちの奥さん(松たか子)のことが描かれており、
奥さんは戦時下にあって、家族があるなか、
自分の気持ちを男性に率直に表していきます。
 
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              女中のタキ(黒木華)を大事にする奥さん(松たかこ)
 
奥さんが初めて夫の部下で若い板倉(吉岡秀隆)に会った時、
嬉しそうにこれまでにないタイプの男性だから、
タキ(黒木華)にも見ておくようにと言います。
やがて恋慕の気持ちにかわり、玄関先にて板倉に口づけしたりします。
さらに、板倉の見合い話で、彼の下宿先に行くようになります。
ところが、女中のタキ(黒木華)は家に戻ってきた奥さんの
着物の帯のひもがとき直していることを知ります。
 
帰ってきたときの時子(奥さん)の表情はなまめかしく、
松たか子の艶っぽい奥さんの姿が印象に残りました。
奥さんのことで悩むタキは、時子の友人から奥さんは、
女学生の頃から誰もが独りじめしたくなる美しさだったと訊きます。
松たか子はその言葉通りの綺麗な奥さんで、
若い佐倉を徐々に好きになっていく過程が演じられていました。
 
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                  小さいおうちの時子(松たかこ)
 
時子は出征することになった板倉の下宿先に会い行こうとしますが、
女中のタキに夫や息子のためにと思いとどまるように説得され、
家で板倉と会う旨の手紙を書き、タキにその手紙を託し、板倉に届けさせます。
ところが、時子は待てど、板倉は家を訪ねてきませんでした。
 
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その後、戦況は進み、小さいおうちは空襲に遭い、
家はまるで時子の心の如く燃えきります。
こうして、小さなおうちの秘密が消え、終戦を迎えます。
この映画は、ここからまだ、戦後のタキを通して話は続きます。
 
映画は監督、脚本家から離れ、観客に委ねられますが、
ひとつの場面をあれこれ想像するのも映画の面白さです。
タキが奥さまを会いにいかないように思いとどめる場面ですが
タキの言葉通り「夫や坊っちゃんに迷惑かけてはいけない」からか
本当は、奥さんを自分のもとに独占しておきたいからか、
そうではなく、タキは板倉が好きだったからか思いもしましたが、
それは、「タキに尋ねよ」でしかないですね。
 
この映画、戦時下の暗さは無く、
一軒のモダンな家でのどかな暮らしがテンポよく描かれ、
そのおうちが、やがて時代の動きに巻き込まれて
小さなおうちの時代と幸せをふりかえってみるようなドラマでした。
山田洋次監督の作品って、いつもいいですね。
 
 
 
月9日