お正月が明けて、借りていたAD1のシングルアンプを返却しにSさん宅(事務所)に伺いました。Sさんは市内に事務所を開いて建築事務所を営んでいる一級建築士の方です。その事務所内にオーディオルームをお持ちです。今回は返却と共に、AD1-PPアンプを拝見させていただきました。
アンプはMONO仕様で左右別々に組まれています。本体フレーム枠に厚手の鉄板を上から乗せ、止めに使用しているビスは目立たないよう低頭ステンレスビスを使っています、作者の細かい配慮がされています。
棚に収納したときに出入力が簡単に出来るように前面に配置されています。オーディオを嗜む者にとって結線を変えることが頻繁です、このようにすることで簡単に変えられる工夫は大切な事です。
シャーシ―もサブシャーシーを組み合せ、熱のクーリングと球の高さを揃えれられています。S氏はクリーング用の通風穴が嫌いとも話されていましした、私は無頓着に沢山の数をいつも開けています。
回路はインターステージトランスを使った位相反転で、古典に習って採用されています。初段をμ:20のムラードL63、次段をμ10-12のGEC ML4のパワー管でTRIAD A-33Xインターステージをドライブしています。パワー管は貴重なTELEFUNKEN AD1 以前ebayで2本で70万円以上の売価のついたものを見たことがありあります。AD1はいろんなメーカーが有りますが群を抜いてTELEFUNKENが人気があり、数が出回らない希少価値が高い球のようです。シングル、プッシュを合わせて6本、予備に1本、計7本を持っているとのことです。その他にバルボ社4本もあるのですから凄いですね。
整流管はTELEFUNKEN CV593が使われています、出力トランスはUTC LS-61 チョークはL.M.T 2Hを2段で使用されています。電源トランスは国産品が使われています。
トランスの画像になります。出力トランスは、古いUTCの鋳鉄ケース LS-61 Sさんは特にこの時代のUTCを何とも言えない音色が出ると気に入られています。
A-33Xはバンド型トランスで質素に見えますが、管球王国誌で試聴比較紹介された評価の高いTRIAD社アメリカ製
トランスです。
内部配線の様子です、何度もも何度も部品を交換して試聴を繰り替えしたので、回路図と一部違って部分もあると話されています。
初段と次段間のカップリングコンデンサはロシアのオイルペーパー、インターステージ間はSIEMENS MPコンとなっています。欧州カップリングコンデンサの状態の良い物の入手困難で使いたくとも難しいと話されています。
ハムバランスはVR10Ω、両脇に20Ωを付け、調整を精密化を図っています。カソード抵抗は750Ω10W IRCのセメントを使用。普通であればメタルグラッドを使用しがちですがあえてセメントを使用しているとのことです。パラってるのは音が良いと言われている紙巻コンデンサーを使用しています。最近の電解コンデンサーは形状が小さくなりがちですが古く形状が大きい方が良いと言われてる方もいます。
下棚のアンプが年前にお借りしていたAD1シングルです。
AD1-PPアンプの音は、シングルに比べ低域が締まっていてダンピングが効いてるように聞こえます。生き生きと躍動感に満ちた伸びやかな音です、JAZZでもクラシックでも2刃流に使えるように感じます。
私はPPで製作することは金銭的に出来ないのですが、トランス結合のこの音を聴いてシングルのグリットチョーク
を試したい気持ちさせられました。良い経験をさせていただきました、Sさんありがとうございます。
次回はSさんのスピーカーなど全体システムを紹介させていただきます。