WESTHILLS/SAPPORO

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札幌から真空管アンプの製作とビンテージオーディオ機器の話

前回に続いて「盤友人」さんのオーディオシステム、入口のご紹介と真空管アンプをご紹介いたします。私も「盤友人」さんの所で初めてお目にかかることが出来た貴重な品物での体験でした。Neuman DST62 カートリッジとEMT 927ST プレーヤーです。なかなか、この組み合わせにはお目にかかることは出来ません。

 

窓際にあるのが「それ」です。Neuman DST62はダイナミックバランスアーム、オルトフォンのRMA297アームに装着され、昇圧トランスのデンマーク JS41 に繋がっています。いずれも超一級の定評がある品物ですね。

 

 

ブログをご覧いただいている方はご存知と思いますがNeuman「DST」というカートリッジは同社のカッテイングマシーンに付属してくるラッカー盤の検聴用のカートリッジで1958年頃のステレオ黎明期にNeuman 社で製造したステレオ用カートリッジです。「DST62」は改良が重ねられ1962年に発表された後継機種のようで62は年度を示しているようです。構造はカンチレバーを用いず2個のコイルをダイレクトに磁場で動作させて発電される仕組みで画期的な構造となっているようです。日本でもガレージメーカーが同様な構造で製作しているものもあるようです。

 

(ステレオサウンド誌より掲載)

 

EMT297stも素晴らしいプレーヤーですね、専用インシュレータースタンドに収められていて一層の能力を発揮しているようです。これ以上のベストな組み合わせは、私の頭での中では考えられないと思います。

 

 

手前、ガラード301のプレーヤーでモノラル専用として使っているそうです。301はイギリスBBCで使われて来たという由緒ある堅牢な機器です。なんと今でも補修パーツが入手可能で修理が出来るというのも凄いです。日本では補修パーツが入手できるビンテージオーディオ機器は皆無です、後世に伝え、世界に誇れる機器がないといことなのでしょうね。このハンマートーン301はスピンドルがグリス仕様で通常のオイルスピンドルと音味が違うという事です。アームはオルトフォンモノラル専用アーム「RM309」2Pinです。カートリッジの能力を最大限を引き出すアームも名脇役で、音質に大きく影響します。パイプの材質、内部配線材、ウエイトの材質、ピボット構造、何をとっても音に影響しないものはありません。

 

 

カートリッジはオルトフォン 通称「クロツノ」です。このカートリッジしか再現できないMONOレコード盤が数多くあるようです。50年代の貴重なモノラル盤は当時の同世代「角」カートリッジでしか本当の再現できないようです、現代の丸カンチレバーのモノカートリッジでは、チリチリ、サーサーと役者不足で欲求不満な音でしかならない。しかし、このシステムでれあればリッチで豊かな音場が広がります。昇圧ランスは#41よりも昇圧比が低い#384、2台仕様に接続されています。

音の入り口は、これ以上ないということなのでしょうね。なんとも羨ましいですね。しかし、オーディオは自分の背丈にあった機器の中でいかに本質を引き出し、演奏できるか最善を尽くすのが醍醐味ではないかと思います。

 

 

イコライザーアンプはエコーマシーンEMT140に組み込まれていたプリアンプV54を改造したものです、EF804S-2段、E80CC-2段のNF型イコライザーです。当時のオリジナルのトランス関係とできるだけ当時のコンデンサー、抵抗を採用、セレン整流電源など使っているといいます。

 

 

ラインアンプも先ほどのEMT140アンプから取り出した、電源トランス、出力トランス、プレートチョークを採用し左右独立電源、回路はPG帰還のムラードECC32構成です、アンプの筐体天板を外して不要振動を防いでいます。6台の碁盤に機器を設置し、振動制御する工夫をしています。「ここまでやるか」の熱意が感じられます。

 

 

メインアンプはドイツ部品で構成されたAD1シングルアンプになっています、ドイツ製アンプから取り外された電源トランス、EMT140アンプから取り出した、出力トランス、さらにTELEFUNKEN製のAD1、REN904、RGN1064などの真空管が使われています。

全体通して、凝りに凝った機器を採用したうえに仮想アースや実際に地中に埋めたアース棒などアースへの配慮がされている。またドライカーボンや将棋盤採用、アンプへの不要振動などの対策が熟慮されていることが判ります。

 

 

機器への電源は光城精工のクリーン電源に加え、さらに複巻アイソレーショントランスを通じて送られています。いろいろと試験を重ね、最終的にこの配置、機器の組み合わせに行き着いた「盤友人」さんの現在の結論です。

 

 

このシステムで「心に響く」どんな音楽を楽しんでいるのでしょうか、興味が湧きますね。「盤友人」さんの話はこれで終わりになります、ありがとうございました。