兄友人私の3人で近くの神社へ行った

車で20分くらい

山の頂上手前の山の中にある神社


いつもなら友人と2人で行くのだが、

その日は兄も連れて3人で行った



神社の長い階段の下は社務所と広い駐車場がある

コンクリートで整備された駐車場と、

その駐車場から外れると草が茂り、

水道の蛇口が1つあった


神社の階段は山の中に入り込んでいて、

階段の両脇と、

その階段に入る前の山の壁には、

白い綺麗な紫陽花が咲いていた

たまに青や青紫の紫陽花も咲いている


その日は澄んだ青空で、

駐車場にいる限りは

気持ちの良い日和だった



階段をのぼる前、

水道のあたりを振り返り兄が言った


「何か白いものがいなかった?」


そこには白い小さなおきつね様がいた

こちらを見る訳ではなく、

遊んでいるようだった

兄は勘が良い



階段をのぼり始める

私と友人は体力が無い

兄は肉体労働者なので体力は充分だ

私達を待ちながら1人で先に上がった


何段かのぼると階段がフラットになる

またのぼる

それを繰り返す内、

景色が変わった


下は日和が良かったが、

中に入るほど木に覆われ影になり暗くなる

白い紫陽花が薄紫にも見える


しんと静まった空間

のぼってものぼっても神社はまだ上で、

階段の横幅が広いことだけが安心な気がした



神社に辿り着く


階段をのぼったすぐにお社があり、

神社周囲の敷地はそんなに広くなかった

扉は閉まっていたが賽銭箱は中にあり、

勝手に開けて参拝しても良いシステムだった



階段を下りながら目の前に広がる景色を見た


下界から切り離した空間のような神社で、

ここにいることが

入ってはならない場所に入り込んだ怖さを感じた


その日は私だけ午後から仕事だった




夜、仕事から帰宅後怒られた


「このドアホウ!!

おまえがそんな体たらくだから

おきつね様が間違えて、

おまえの兄に用件を託したぞ!!」


お師匠さんだ

お師匠さんは怖い

いつも怒鳴る


「おまえ

あそこのおきつね様に何て言われてるかわかってるのか!?

神代の国にバカが来た

って言われてるんだぞ

もう一度行き直せっ!!」



『神代の国にバカが来た』



なんというひどいことを…



おきつね様は可愛かったが、

私を見下した


背がすらっと高く顔付きも穏やかで立派に見えた兄を、

今日のご主人だと思い、

兄に用件を託したのだという


私が用事があったのに



「次また行って、

私が用事があるんだ!!と叫んで来い」


怒鳴られた



それから数日後、今度は友人と2人で行った

またあの空間の階段をのぼって

神社へ辿り着く


「私が用事があるんだ!!」


口に出せないので心で叫んだ



これで良いのか、納得して貰えたのかはわからない

が、用事は済んだので友人とそのまま降りた



山を下る

車で下りながら、

目の前に広がる光景に圧倒された


おきつね様が同行して一緒に道路を走っている


集団の白いおきつね様

老齢、若齢、

爺のようなおきつね様も一緒に下山して、

国道を激走していた


圧巻だった



今度は受け入れて貰えたらしい





それからは、

バカが来たと間違えられないよう

バカな顔はやめて行くようにした