山本敬一 55歳 会社経営
山本千佳 52歳 敬一の妻 専業主婦
坂元由利 51歳 敬一のいとこ 会社経営
橿原真紀 33歳 由利の娘 一児の母 専業主婦
坂元真一 30歳 由利の息子 サラリーマン

千佳 あなた、お忙しいのに悪いんだけど来週から10日ほど淡路島へ行ってきたい
の。いいかな?
敬一 いいよ。俺も忙しくて家にいつく暇もないんだから、ゆっくりしておいで。時間が
取れたら俺も、後から行こうかな?
千佳 ごめんなさい。大学時代の友達と一緒なの。
敬一 ふ~ん、それならしょうがないか。まあ、大いに楽しんでください。奥さま。お土
産楽しみにしておりますよ。
離婚

敬一 突然送り付けるなんて、ちょっとひどいんじゃないか?俺はけっこう君の希望通
りにして上げたつもりだよ?
千佳 なんで、何もかも希望通りなの?なんで、何でも買ってくれたの?なんで、会社
が大変な時も、私は贅沢してたの?なんで、どんな時でもやさしかったの?
私、その理由わかってるつもりよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
貴方のことが、好きだったから我慢してたの。いい加減私のものになってくれると
思ったわよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なのに何?あの人のご主人が亡くなってから、ボーっとして。もう私もいい年よ。
疲れたわよ.
敬一 何の話だよ。俺はすることしたつもりだよ。
何もかも君の思い通りにしたはずだよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まあ、今度も思い通りにしたらいいよ。君が困らないような金の段取りはするよ。
千佳 なんで、怒らないのよ。なんで怒鳴らないのよ。なんでお金くれようとするのよ。
心の底でホッとしてるのわかるのよ。・・・・・・・・・・・・・・
お金は十分用意してくださいね。私は、お金を稼ぐことはできませんから。
昔の恋

敬一 お~い、お前のバカ亭主死んだんだって?
坂元由利 バカはあなたでしょ。何、大声でばかなこと言ってるのよ!・・・・・・・・・
ぼ~ッとしないで。私がいける口なの知ってるでしょ!
怒らせたんだから、さっさと注ぎなさいよ。・・・・・・・・・・・・・
人のことより、あなた、いい年して何、突然離婚してるのよ。
親戚中びっくり仰天よ。
敬一 向こうから一方的に離婚届、送り付けてきたんだよ。
もう自由になりたいんだって。
坂元由利 何?あなた奥さんに口うるさくしてたの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなた、奥さん甘やかし過ぎだって、おばさんいつも愚痴ってたのに。
敬一 俺は拘束もしなかったし、買いたいものは何でも買わせてたし、家も好
きな家を建てたぜ。
何の苦労もさせなかったし、記念日も忘れなかったし、
あっちの方もきちんとやってたよ。
俺は最後まできっちりやる切るつもりだったよ。
坂元由利 そっちをきちんとやって、最後までやり切るって言われる女の気持ちわか
らないの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それ、ずいぶん残酷な話よ。それで、30年暮らしてたの?
敬一 何が残酷?意味わかんねー。
坂元由利 ひどい男だわ。奥さん、ちゃんと生活できるの?ちゃんとした?
敬一 した。家も出た。淡路島の別荘も渡した。
でも、よっぽど嫌だったんだろうな。両方とも売りに出してる。
まあ、贅沢しなけりゃ一生食べるぐらいにはなるだろう・・・
俺、今家なき子だ。駅前のビルに住んでる。
坂元由利 毎食、外?
敬一 うん、親切にしてくれる女もいないしね。
坂元由利 でしょうね。もういいオッサンだし、家なしじゃね。
敬一 同情してくれる?
坂元由利 しない。・・・・・・・・・・・てっきり、若い女ができたのかと思ったわ。
それで、むしゃくしゃして奥さんの代わりに、カツ入れてやろうと思った
んだけど。最初に、いきなりバズーカだから、なんか無茶苦茶腹立つ
っていうか、ホントの原因って何?
なんで、この年になってから別れることになったの?
敬一 う~ん・・・・
そっちの凸凹亭主が死んでから俺の様子がおかしかったらしい。
坂元由利 それって、要するに私のせいっていうこと?
ひどい裏切り者ね。ものすごい長い間、優しい顔して裏切ってたんだ。
筋金入りの裏切りものなのね。あなたって。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あのね、あなたは凸凹亭主っていうけれど、あの人も結局かわいそうだ
ったのよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
けなげそうな顔をして、心を開かない女に苦しんでたのよ。・・・・・・・・・・
あなたが、そんなに徹底して、いい夫を演じられるような人には見えな
かったのよ。・・・・・・
ず~っと、本気であの奥さんに惚れきってるんだと思ってたの。
敬一 君があのバカ亭主とさっさと別れていたら、こんなに長い間、芝居じ
みたいい亭主を演じることはなかったんだよ。
坂元由利 あんなに怒って私の婚約をつぶそうとした人が、結婚したら絵に描い
たように優しい夫にになって、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本気で嫉妬したのよ。
だから、何があっても離婚しないって決めたのよ。・・・・・・・
敬一 突然、全く別の男と婚約したって言われたら、ふつう驚くよ。
何にも説明ないんだから、心折れるよ。
そういうこと、わからないかい?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
派手に目立つ女と結婚して、幸福アピールしたくなるよ。
というか、結婚当初は君のことは忘れて千佳を幸せにして上げようと
思ってたよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
でも、どうだ。見栄を張る相手は、見栄どころじゃなかったんだぜ。・・・・
必死の形相で出勤する君を見るのがつらかった。
そうまでして、あの亭主を守る君に腹が立った。
俺に一言相談してくれたら、もう少しマシな段取りをつけてあげられる
のに、一言の相談もなしだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だから、君から心を離すことができなかった。
坂元由利 幸福そうな元カレに頼れる?
一方的に裏切った女が、どの面下げて頼るのよ。
それに、子供がいれば、どんなことしても家庭を死守したくなるものよ。
がんばればよくなるって信じてたのよ。子供の父親よ。・・・・・・・・・・・・・
実際、頑張ってよくなったのも事実なの。私、結構実業家だったのよ。
親の会社だから、いい従業員もいたし、取引先もいたのよ。
着任したとき、ホントにもうだめかと思ってたんだけど。気を取り直して働
いてくれる人もいたのよ。父の人徳が生きてたのよ。
敬一 何で、追い出さなかったんだ、あの男。
それなりにいい家の息子なんだから、追い出しても食べて行けただ
ろう?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺はね子供の父親になりたかった。俺は親父が好きだったから子
供が欲しかったんだ。親に孫を見せたかったけれど、できなかった。
心残りだよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
普通に恋愛して、普通に結婚して、普通に幸せになれると信じてたん
だよ。俺自身も親もだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何で必死で勉強したと思う?何で一流の大学出たと思う?・・
誰が見ても、坂元の婿にふさわしい男になりたかったからだ。・・・・・・
会社の跡を取っておじさんの孫に引き継ぎたいと思ってたよ。
おじさんは俺の憧れの男だよ。・・・
俺は、学生時代から君も君の親も喜ばせようと思って生活してたんだ
ぜ。
坂元由利 私ね、あなたに本気だったのよ。
あなたしか見えなかったの18歳ごろまでは。
でも、祖母が亡くなった時に、いろいろ思うことがあったの。・・・・・・・・・・
祖父って、お妾さんがいたのよ。18年も続いた人がいたの。
親戚中みんな知っていたんだって。祖母が亡くなってから、祖父はその
人と暮らし始めたのよ。祖父が76のときよ。・・・・・・・
さすがに、祖父のことは大嫌いになったわ。
それでも、経営者としては尊敬されていたのよ。
そんな祖父が本当に嫌だったの。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
父には、お妾さんはいなかったけど、放蕩には違いなかった。
女性関係に切れ目がなかったのよ。母は平気なものだったわ。
祖父を見ているから、そんなものだと思ってたのよ。
敬一 君のお母さんは親戚では有名だった。
大した太っ腹だってみんなある意味尊敬してたよ。
だから君の家はお母さんのおかげで丸く治まってて幸福そうだっ
た。
坂元由利 そう、幸福だったの。祖母が亡くなるまでは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女遊びはただの遊びだって思ってたの。
だから祖父がお妾さんと一緒に暮らし始めたのは本当に晴天のへき
れきだった。父も母も祖父を軽蔑したの。
家から幸福感が吹っ飛んだのよ。・・・・・・・
祖父も父も本当にきれいな人だったわ。顔もきれいで背も高くて。
私は、友達からお父さんがハンサムだっていっつも言われていたの。
祖父も、そうよ。あなたのお母さんは、しょっちゅうおじいさんはきれい
な男だって自慢していたの。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
でも、私は、きれいな男が嫌だったわ。
容姿が美しい男は、怖かったのよ。・・・・・・・・・・・・・・
それに祖父も父も性格が激しかった。
あなたのお母さんも激情型よね。・・・・・・・・・・・・・・・・
そういう血筋が嫌だったの。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたは、祖父や父によく似て、とってもハンサムで女の人にモテた
わ。・・・・・・・・・・・・・・・・私ね、そういうところが嫌だったの。
貴方と結婚すれば、私は、いつも、嫉妬で苦しまなければならないと
思ったの。あなたのことが本気で大好きだったの。
あなたが愛人でも作ったら私、本当につらい思いをすると思ったの。
もし、子供ができたら、私の子供も放蕩になると思って怖かった。・・・
そのあなたが、まさか、あんなに奥さん一筋で暮らす人だとは夢にも
思わなかったのよ。
敬一 それで、あんな凸凹男と結婚したのか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
嘘みたいに急に婚約して、婿にとった凸凹男は人並外れた放蕩者で
浪費家だったのか?それで苦労ばかりしてたのか?・・・・・・・・・・・・
アホか君は。
坂元由利 でも、初めてのとき、私はまだ中学生だったのよ。
あなたは、早熟だった。どう見ても、放蕩予備軍だったのよ。
敬一 親戚中がみんな、暗黙に了解してたんだ。
いずれは、結婚するんだから自然の流れだって、両方の親が思って
た。おばさんなんか、しょっちゅう夕食に呼んでくれてたし。・俺の親
も、喜んでたんだよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それが、突然、よそから婿を取るっていうんだから、ホントに訳が分か
らなかった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女なんて、どうでもいいと思ったよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男前だから嫌だったって、そんな理由思いつくか!・・・・・・・・・・・・・・
しかも、息子はずいぶんいい男じゃないか。女関係は派手かい?
坂元由利 ううん。地味。まじめよ。最近になって、やっとわかったのよ。
放蕩かどうかは容姿じゃないってこと。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時代も違うしね。放蕩なんて、今は死語ね。
*好きでもない男と添い遂げた女、好きでもない女を30年近く騙そうとしていた男、どちらが本物の放蕩?放蕩は遺伝するんです。


















