新聞記事で、

「今年の大佛次郎賞受賞作品」

と言うふれ込みが目に留まった。

 

著者の堀川惠子氏は、

「教誨師」「死刑囚からの手紙」などで知られる

 

でも、「宇品」ウジナ? 

聞いたことがないな。

 

広島の南部の埋立地で、日清、日露、以来の

陸軍船舶司令部の本拠地だ。

 

広島出身の堀川さんが、

「なぜ広島が原爆の落とされる地として選ばれたのか?」

と疑問を抱いたのが取材のきっかけだという。

登場する軍人さんたちは、知らない人ばかりだった。

 

田尻昌次(たじりしょうじ)、佐伯文郎(さえきぶんろう)

先の大戦で日本の船舶運輸の元締めをした人たち。

 

周囲を海に囲まれた日本列島だから

船を使わずにはどこへも何も運べない。

燃料は石油。

輸入先は米国。

その米国に戦争を仕掛けるという狂気に

誰もノーが言えないという狂った時代。

 

陸軍と海軍の歯車が噛み合わない。

陸軍に元々船はないから、

民間の船を徴用(取り上げ)し、船員も

民間から連れてくる。

負けるのは開戦のはるか前から

明らかだった。

 

読み続けるのが辛いのに

どのように終わるのかを見届けたくて

一週間で読了した。

 

大佛次郎賞には他にも候補があったが

圧倒的多数で本書が受賞したというのも

うなづける。

 

年末に、記憶すべき

ノンフィクションに出会った。