『六人の嘘つきな大学生』を面白くて一気に読みしました。
1. 息詰まる序盤:誰が「犯人」なのか?
物語の幕開けは、究極の心理戦でした。
IT企業の内定を賭けた最終面接。和やかだったはずの六人が、一通の封筒によって互いを疑い、剥き出しの悪意をぶつけ合う。
ページをめくる手が止まらないほどの緊張感。「誰が犯人なのか?」「誰が嘘をついているのか?」とハラハラしながら、私も彼らと一緒に密室に閉じ込められたような感覚に陥りました。
2. 中盤の反転:実は「みんないい人」だった
しかし、物語は単なる「犯人探し」では終わりませんでした。
時を経て明かされる、当時の真実。暴かれた「裏の顔」のさらに裏にあった、彼らの等身大の優しさや葛藤を知ったとき、序盤の刺々しい印象は一変しました。
「実はみんな、必死に生きていただけだった」
その事実に触れた瞬間、冷え切った心が温まるような深い感動が押し寄せます。
3. ラストの衝撃:波多野の手紙に潜む「本心」
そして、最も揺さぶられたのが最後の一幕です。
波多野が人事部に宛てた手紙。そこに綴られていたのは、それまでの感動を冷ややかに突き放すような「腹黒い本音」でした。
- 手記で見せた誠実さが本物なのか?
- それとも、人事部への手紙こそが彼の本性なのか?
どちらか一方が正しいのではなく、その両方が彼の中に存在していたのかもしれません。
結びに:人を本当に理解し、信用できるのか
この本が私たちに突きつけるのは、「多面的な人間という存在を、たった一面だけで判断できるのか」という重い問いです。
いい人だと思っていた人が冷酷な一面を持ち、悪人だと思っていた人が誰かを救っている。
人を完全に理解することも、無条件に信用することも、実はとても難しいことなのかもしれません。
しかし、その「わからなさ」を含めて人と向き合うことこそが、本当の意味での「信用」への第一歩なのではないか。そんなことを考えさせられる、極上の読書体験でした。

9