民法644条。これは委任契約の条文だ。委任契約というのは委任者と受託者の二者で何らかの行為をすることを約するものだ。

 

 これに対して民法の特別法として定められている信託。委託者、受託者、受益者という三者が登場してくるところが理解を難しくしているのかもしれないが、ニーズが高まりつつある中でも、なかなか金融機関の方達も理解されてはいないようでもある。

 

 自益信託であれば、委託者が受益者であるから、結果的には二者関係にはなるが、法理論的法律関係は異なる。というのは委託者と受託者の間で信託契約が結ばれ、委任関係であるけれども、受託者と受益者は、債権・債務関係にある。

 

 法律的なお話はここまで。相続、相続税、特に相続(税)と信託の関係に話を変えていこう。信託自体は、相続税対策として歌う人もいるがそれは違う。直接的にはつながらないが、相続対策の結果として、相続税対策も同時に考える、プランニングすることにはなりうる。。

自益信託の場合は、委託者が亡くなるまで相続(税)・贈与(税)の世界とは無縁の世界だ。ただ、他益信託の場合と自益信託から他益信託になった場合には、その途端に相続(税)の話しが登場してくるのだ。

 

資産の所有者が移転したら、その時にはじめて、要は、相続(税)の話しになるのだ。ここでは贈与税も相続税に含めて話しを進める。とすると、信託もはじめは、委託者が死亡や財産移転を他者にしない限り、税金を意識しなくてよいが、他益信託になった場合話しが変わる。

つまり、財産を移転した者には、所得税が課されることもある。他方で、もらったものや、時価より低くもらったものについては、贈与税が課されるのだ。もちろん、信託のスキ-ムの中で死亡を原因としていれば、相続税の話しになる。

 

ここで注意をしなければならないことがある。信託財産の取り扱いが民法と相続税法では異なるということだ。どう違うか。前者では相続財産とはならない。というのもすでに固有の財産になっているからだ。後者では、信託財産もその他の財産と合わせて相続税における相続財産になる、ということだ。そうしないと、相続税が、財産の移転について不均衡が生ずるからだ。

 

信託と税金については、基本的には他者への財産移転に課税されるということだが、話しは多くの税金に及び、一般社団法人について税制改正がされたことから、複雑なみなし課税等が適用される場合もある。そこで、一般社団法人を用いた信託スキ-ムの作成は注意を払わないといけない。