デイヴ | カズモのロックなブルックリン▪︎ライフ!

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ブルックリン在住のシンガーソングライター、わたくしkazmo grooveが日々の暮らしや感じた事を綴っていきたいと思います。

あれはもう32年前の話だ。

 

語学留学の為にニューヨークにやって来た。

 

マンハッタンから電車で40分ほど北上した町、ブロンクスビルにある小さな大学の外国人の為の英語コースを一年程受けた。

 

キャンパス内にある寮に住んだ。

 

もちろん、普通のアメリカ人の大学生達も周りにいる。

 

まあ、色んな奴との思い出があるが、今日はデイヴについて書こう。

 

彼はオレより2歳年上の短い金髪で痩せっぽちの男だった。

 

割と誰にでもフレンドリーで、どこかイカサマ師みたいな感じもあった。

 

悪いやつじゃなかったし、オレも好感を持っていたんだが、彼は寮でも自分の部屋を持っていなくて、

 

空いてる部屋に勝手に住んだり、オレの部屋にも寝泊りしていた事もあった。

 

まあ、ちょいワルの憎めないやつ、という感じかな。

 

彼はエリック・クラプトンを崇拝していた。

 

ある時、オレが大学の隣町のフリートウッドのバーで何曲かビートルズなんかの曲をギターで歌った時に彼はそこにいて、

 

オレに対して一目置くようになった。

 

でもオレも初めての海外生活。

 

気が滅入る日もあってね。

 

自分の部屋にこもっていたりもした。

 

ある土曜日、授業は無くてオレは夕方までなにもせずにベッドでゴロゴロしていた。

 

誰かがドアをノックした。

 

デイヴだった。

 

「おい、カズ。軽くその辺のバーに飲みにいかないか?」

 

あんまり気が乗らなかった。そういう気分じゃなかった。

 

「うーん、今日はやめとくよ。」

 

「おい、行こうぜ。ずっと部屋にこもってるのも良くないよ。

軽く2,3杯ビールを飲んで帰ってくるだけだ。」

 

彼がしつこく誘ってくるので、こっちも折れて、

 

「うーん、オーケー、ビール2杯だけなら付き合うよ」

 

という事になった。

 

彼は色褪せた赤い車に乗っていた。

 

車種は思い出せない。

 

中古のアメリカ車だ。

 

彼がエンジンをスタートさせて、ラジオをつけた。

 

たまたま、ある音楽番組でエアロスミスのスティーブン・タイラーがゲストでMC/DJを務めていた。

 

「ハーイ、オレはエアロスミスのスティーブン・タイラーだ。そこの君、土曜の夜にそんな暗い顔してちゃだめだ。オレ達の曲を聴いてゴキゲンに過ごしてくれ!」

 

そしてエアロの「ジ・アザーサイド」がかかった。

 

なんか、急に気分が良くなった。

 

楽しくなった。

 

そうだ、これがアメリカだよ。

 

このノリだ。

 

ロックンロール。

 

オレ達は近所のバーでバドワイザーの瓶を何本か飲んで、とりとめのない話をして寮に帰ってきた。

 

「デイヴ。」

 

「何だ?」

 

「今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ。」

 

「ああ、また行こうぜ。」