http://sankei.jp.msn.com/smp/life/news/120312/bdy12031216150002-s.htm
【からだ こころ いのち】再生の時代 みぞおち緩めて深い呼吸
2012.3.12 16:15
震災から1年、復興はまだまだ遠く、重荷を負ったまま進む方向もわからない方たちが、予想以上に多いとわかってきた。復興策にはますます知恵を集めていかなければならない。その一方で、疲弊して動けなくなることがないように、本欄ではからだやこころの整え方を、これからもお伝えしていきたい。
何をするにも、呼吸が浅ければ心が乱れ、長期的な視野がもてない。現代人には呼吸が浅い人が多いのだが、みぞおちが硬いために息がおなかに入らないためだといえ、深い息をしようと頑張ると余計にみぞおちが硬くなることもある。みぞおち自体から考えるのが効果的だろう。
左右の肋骨(ろっこつ)の下の縁を外側からたどって、胸の真ん中までくるとそこがみぞおちだ。殴られたら気絶する急所であり、死の前にはこの奥に特殊な硬結ができると言われている。みなさんは、ここに指をぐっと入れてみると、硬さや痛みを感じるだろうか。みぞおちは身体の不調があると、また心理的不安、焦り、感情の我慢でも硬くなる。90年代、若者が「むかつく」という言葉を連発するようになり、現在はやや飽きられたようだが、それでもよく使われている。「むかつく」とは、みぞおちが硬い身体状態を表現している言葉だろう。
ある有名な武術家の方のみぞおちに、私は指を入れさせていただいたことがある。片手の4本の指をまっすぐつっこんでいったのだが、そこは異様に柔らかく、ずぶずぶずぶと何の抵抗も感じないまま、指の付け根まで全部入ってしまった。みぞおちとはこれほどまでに柔らかくなれるのかと驚き、この方の超絶的な動きは、ここの柔らかさあってのものなのだろうと思った。
みぞおちを緩めるために効果的な呼吸法がある。少し膝を開いた形で正座し、みぞおちの脇に両手の指を伸ばして揃(そろ)えておく。口から肺の空気を全部出す気持ちでハーッと吐く。それと同時に、両手の指をみぞおちにつっこんでいき、さらに同時に上体を膝の間までしっかり倒す。吐き終わったら、上体を起こしながら、みぞおちに入っている指をぷっと離す。その時、新鮮な空気がハッという音をたてて胸に流れ込むだろう。
毎日これを3回くらいすると、胸の中の残気がすべて捨てられて、ずるずるひきずる思いやむかつく感覚がひとりでに消えていく。普段の呼吸がみな深くなる。
私たちの前にある難事はあまりに大きく、みぞおちが硬いまま向き合うのは無理だろう。深く静かな呼吸を保ち、長い視野で組み合っていきたい。(明治大学文学部准教授 平山満紀)
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