平瀬美術館から広島市側へやや戻り、住宅街を抜けて新幹線の高架をくぐると、すぐに経小屋山方面へ続く山あいが迫る。山裾の大頭神社は、603(推古天皇11)年の創建と伝えられる古社で、厳島兼帯七社の一つと伝わる厳島神社の摂社。海の神である大山祇命と、厳島神社の初代神職の佐伯鞍職命などを祭神に祀り、社名は伊邪那岐命が火之迦具土神を斬った際、大山祇命に化した頭の部分を祀ったからと『芸藩通志』『日本書紀』に記されている。

石鳥居の二ノ鳥居をくぐり、戦病死者の御霊を祀る招魂社の報国神社の先、赤い欄干の別鴉橋で毛保川を渡ったところに、切妻造妻入で正面に唐破風を設けた拝殿が建つ。本殿と幣殿と一体になった複合社殿で、地形の高低差を巧みに利用した重層建築。正面には三体の龍の彫刻が飾られ、開運や挑戦、昇進など諸願成就の御利益があるという。占術師のゲッターズ飯田氏が、2025年に参拝すべき開運神社として紹介したことで注目を集めているとも。

本殿から毛保川に沿って散策路が続き、本殿のそばには高さ50mの雌滝が、繊細な美しさを見せる。さらに先、展望台を経てややアップダウンしたところには、高さ30mの雄滝。岩肌を滑り落ちる水量が豊富な滝で、ダイナミックな流れと豪快な水音が、森閑とした滝壺の付近に轟々と響き渡る。古くから夫婦滝といわれる二つの滝は、大正の初めころ、夫婦を意味する古語「妹背」を用いて「妹背の滝」と称されるように。源流の異なる二つの滝が、大頭神社のそばで流れ落ちて合流することから、良縁や夫婦円満に御利益があるとも。

流れ落ちる滝と、厳島神社に由緒がある古社。瀬戸内の海のそばとは思えない、山間の静けさが漂う潤いある地だ。