中村は土佐の小京都との愛称の通り、四万十川と支流に挟まれた細長い土地に超コンパクトな碁盤目状の街が整備されている。背後の高台には為松城跡があるなど、主要な歴史コンテンツは揃っており、しかも四万十市の中心なのでそこそこ整った街でもある。

ここを治めていたのは朝廷の要職を務める五摂家の一つ、一条家から派生した土佐一条家。公家ながら武士を目指しこの地に知行を持ったというかなり特殊なルーツで、だから京都を懐かしんで模した町割が造られている。居館の跡で歴代領主を祀る一條神社から、目抜通りのその名も京町通を歩き、藩主の奥方だった玉姫の墓所、城山の直下に並んでいた重臣屋敷街、城山へ登り城郭があった為松公園と、ゆかりの史跡を巡った。

城山に建つ模擬天守は郷土資料館になっていて、外観はこの時代の模擬天守によくある犬山城仕様。四万十川関連の展示が充実していて、川魚漁の個性的な漁法や仕掛けや料理法は、なかなか見応えがあった。天守の展望台からは碁盤目状の市街が見下ろせ、前日自転車で訪れた安並の水車がある田園も眼下に広がる。河口方面の四万十川も、ちょっとだけチラリ。

郷土資料館の見物も併せて2時間ちょいと、さんぽの所要時間もコンパクト。清流四万十川に面した、清楚な風情の小京都&城下町である。