佐賀県の有田は有田焼で知られる磁器の工芸の街で、内山地区を中心に工房や商店など江戸期からの町並みが残っている。町並みの玄関口は上有田駅で、そこからまず番所のそばにそびえる大銀杏、材料を採取した泉山磁石場の荒涼とした岩山風景を眺め、トンバイ塀に沿った趣ある小路をそぞろ歩いた。トンパイ塀とは登り窯を築くために用いた耐火レンガの廃材や、使い捨ての窯道具を塗り込めた壁で、赤土と煉瓦が組み合わさり温かい雰囲気を醸し出している。

中心街の県道は伝建地区に指定され、白壁土蔵の町家の建物がひたすら並ぶ。8割方が有田焼の店で、店頭には普段使いの品を並べる店のほか、大皿や壺を配したギャラリーも。深川製磁、香蘭社、辻清磁社、今右衛門窯あたりが有名どころで、深川製磁は富士山に流水のロゴがついた石造りのハイカラな洋館、香蘭社は木造の洋館と和の町家造りの邸宅が並ぶ敷地が印象的だ。どこも撮影NGかと思ったら比較的撮らせてもらえ、歴史民俗資料館では古陶の展示や窯の発掘で出てきた陶片、香蘭社や深川製磁では店内や高価な所蔵品の展示室も。

ほかの見どころも概ね有田焼ゆかりで、鳥居も献灯も狛犬も扁額も有田焼の陶山神社、買い付けに来た外国人商人を泊めた迎賓館の田代宅西洋館など。ほぼ一本道を有田駅まで寄り道しながら歩いて3時間弱で、午前中で歩き終えられた。買い物や体験込みで丸一日が目安の、磁器の里巡りである。