近頃は魚市場の一般見学が自由化される傾向で、建屋の職員通路から見下ろせたり、新築の市場には見学者用デッキを設けたりして、うまくすればセリの間近や水揚げの直上の特等席でライブを楽しめることも。魚紀行を書いていた頃の取材では遠巻きに、怒られないように覗いていたのだが、市場や水揚げの活気を評価、町おこしや観光のアイテムとして活用始めているようである。

先週末に訪れた紀伊勝浦は、近海生鮮マグロの水揚げが日本屈指の漁港で、市場の荷捌き場にはマグロ類しか並ばないという豪華版。2階の通路から自由に見学でき、7時前に訪れると本マグロをはじめカジキ、メバチ、最近「桜ビンチョウ」と謳って売り出し中のビンチョウマグロが、種類別に勢揃いして圧巻だ。

ここの卸売はセリではなく入札制で、下づけを終えた仲買人は受付台に値を決めた札を入れていく。受付台は二色あり、「赤台」は本マグロやメバチマグロなど丸い魚体、「青台」はカジキやビンチョウなど長い魚体用。同色のポールが立つ魚の山が現在入札中の印で、そんなことを頭に入れて追って見ていくと卸売の流れが分かって面白い。

スピーカーで落札価格と業者名が読み上げられるごとに、マグロは手鍵や小車で順次運び出されていく。街中をマグロが往来する様が、南紀勝浦ならではの朝の光景である。