輪島まんなか商店街とマリンタウンを結ぶ錦川通りの先が、朝市通り。始まりは平安時代の記録があり、重蔵神社の祭礼に合わせて持ち寄った産品を物々交換したのが始まりとされる。室町時代に四と九の日に定例化され、明治時代には毎日市が立つようになった。360mの商店街に200以上の露店が軒を連ね、営業権は代々継承されている。まずは露店を眺めながら、一通り散策してみる。入口付近は漆器、呉服、陶器の店舗が並び、その先から農産品の露店が並んでいる。大正元年創業の日吉酒造店は、金瓢白駒などの蔵元。

馬出し小路と木下小路の先からが朝市の中心で、かつてのイナチュウ美術館の洋館の前には、露座の店がぽつぽつ構えている。この先からは、鮮魚と塩干が集中している。朝市通りには、伊右ヱ門小路と風呂屋小路など、多くの名がついた小路が交差する。中ほどの朝市御休憩処は、露店で買った魚介を炭火で焼いて味わえるコーナー。店舗の板張り町家の建築や、レトロな看板も見ものだ。輪島出身の漫画家、永井豪の記念館もあり、入口ではマジンガーZが立ちはだかる。柚餅子の中浦屋の朝市店も構え、漆器やみやげの店も集中している。通りの西端の重蔵神社産屋は、舳倉島の女神が鸕鷀草葺不合尊を身籠った場所。安産の神様として、地元の信仰が篤い。

露店の沿道にはおばちゃんたちの景気のいい呼び声が飛び交い、珍味など自家製などの水産加工品に塩干物、朝とれの野菜や花、いしるや塩やのりなどの加工品などが並んでいる。農産品は近郊の農家が旬の産品を持ち寄り、おにぎりなど手作り惣菜も朝ごはん向け。輪島産との表示も目立ち、さるなしは小粒ながらキウイのような甘さが後を引く。干物は輪島産の魚介が多く、甘エビやホタルイカなど富山湾ならではの魚介も。干ホタルイカはワタの味が濃厚で、酒の肴にもってこいである。

珍味の店では、イカやタコは旬に合わせた自家製の瓶詰めがずらり。名物のイワシやサバの糠漬けほか、カレイ、ノドグロ、フグなど一夜干しは輪島産が並ぶ。カレイやイワシを、店先で素干しにして売る風景も。蒸しアワビは一つ1万円近い高級品で、アカニシガイは店の味付けで甘く煮えている。大漁旗に誘われ、鮮魚の露店も覗いてみると、この時期はアオリイカ、真鯛が旬。輪島の最高級魚とも言われるノドグロや、ブランドフグの輪島ふぐも。能登はトラフグをはじめマフグ、ゴマフグ、シロサバフグなど天然フグが水揚げされ、天然ふぐ類漁獲量は輪島市が日本一。

刺身や丸のままで持ち込んで、定食や焼き物、煮付けにしてくれる店もある。日吉酒造店はささのつゆ、おれの酒なども並び、金瓢白駒は永井豪ゆかりのラベルも。ほか漆器や箸、曲げわっぱ、布ゾウリなど工芸品の店も並び、まさに輪島の食と生活雑貨のマーケットである。