慈眼寺の薬医門式の山門を抜け、聖人通りを踏切を渡った先で右に入ると、西武秩父駅へと出る近道へ。西武秩父駅はリニューアル後、かつての仲見世が温浴施設の「祭の湯」に。温泉エリア、フードコート、お土産売り場の3つに分かれ、武甲山が見える露天風呂には季節ごとにさまざまな湯が引かれる。フードコート「呑喰処 祭の宴」にはわらじかつ、そば、みそポテトなど7軒の秩父のご当地食の店が、「ちちぶみやげ市」は2000種もの秩父みやげが揃う、食と物産の拠点でもある。駅舎は秩父杉材や地産品の提灯、織成柄をあしらい、当地らしさを出している。

駅前広場のモニュメントは夜祭の曳山を紹介、一角には昭和44年10月14にちの、西武鉄道秩父線の開通記念碑も立つ。駅を後に、駅前を横切る通りから歩道の「まちなか回遊案内板に従い、路地を右へ。駅前の市街をゆく道で、柿の木が聳える古民家ギャラリーや、そばや和食などのローカルな飲食店が並ぶ。国道140号の秩父往還を渡り、秩父銘仙のレトロな和装看板に従い先へ、さらに住宅街へと入り、秩父霊場の巡礼道の案内も見られる。雑貨店や飲み屋が並ぶところを案内に従って折れると、秩父銘仙館の建物が目に入ってくる。

かつて秩父銘仙の発展を支えてきた、昭和5年建造の旧埼玉県秩父工業試験場の建物を活用した展示施設で、アメリカ人建築家ライトが考案した大谷石積みの外装が特徴だ。館内は秩父織物や銘仙等に関する資料など、秩父銘仙の伝統技術を伝えている。養蚕業が古くから盛んだった秩父は、絹織物の生産も行われ、地元では織物産業が定着、さまざまな技術が取り入れられてきた。中でも1900年代初頭の「ほぐし織り」を導入した秩父銘仙は、斬新で華のあるデザインから若い女性に好評で、当時の流行の最先端として人気を博したという。

入口からは渡り廊下が三角屋根の工場棟へのびており、当時の応接室などもそのままの佇まいで残る。ノコギリ屋根は当時は灯を電気でなく窓からとったためで、ノコギリ型にすることで多くの窓を設けていた。本館廊下からまずは整経場へ、当時の機械が定期的に稼働している。整経は経糸を記事のサイズや柄に合わせて、長さを揃えて織り機に巻き付ける工程で、糸繰機(スタイロボビンワインダー)で糸をボビンに巻き取り、後ろの整経機へセットして多数の糸を集約、柄に合わせて縦糸を整える。入口左は五本合糸機で、数種の糸を巻き取って合糸。隣のイタリー式撚糸機で糸に撚りを加えていく。

隣接の展示資料室では、秩父銘仙の歴史や製造工程を展示。織と染めについては、捺染した経糸を平織した秩父銘仙の特徴、経糸のみで柄を作るほぐし織について紹介している。反物の見本には、アンティークの銘仙も。館内では手織りやほぐし捺染の体験もでき、型彫室では和紙に手彫りした型紙で型染め体験も。展示直売所には織元による反物や和装、日用品の販売も行われている。ギャラリーには着物や織り機の展示に、銘仙羽織を着ての記念撮影もできる。