繁華街の土手町にある、昭和2年創業の創作郷土料理の老舗。料亭らしい構えだが津軽地方の一品料理をはじめ、親しみやすいメニューと手頃な値段がありがたい。まずはビールと、弘前のローカルフードのいがめんち。ミンチにしたイカを野菜などと混ぜて揚げてあり、イカはさまざまな部位を使ってあるので、シンプルながらイカの風味と歯応えが際立っている。

今宵はイカづくしを決め、次はイカのバラ焼とばっけ味噌で「金のじょっぱり本醸造」を一本。締めはイカの三升漬をのせた熱々ごはんに、「けの汁」を合わせた。津軽の家庭料理で大根、ニンジン、ゴボウなどの根菜や、ワラビやフキなど山菜の塩漬け、油揚げや高野豆腐といった大豆の加工品が入った郷土の味噌汁。小正月に嫁が作り置きする料理で、具を細かく切ってあるので食べやすく、粥の汁がなまったとされるだけに滋養が染みてくるようだ。

カウンターを挟み、お姉さんと少しばかり雑談。実は20年ぶりの訪問で、弘前城の天守の曳家など弘前の町の変遷を肴に酒が進む。洋館が多いハイカラな街にあって、地に足のついた落ち着ける郷土料理の店である。