再び刀町へ戻り、唐津バスセンターから大手口西交差点を渡って、かつての唐津城の武家屋敷地だった三之丸へと入っていく。わずかに再生された三之丸を囲む堀の一部、肥後堀の脇の坂を登り、櫓を模したトイレを過ぎ、唐津市役所沿いの石垣の道を行く。通りの向かいには間口の狭い飲食店の長屋が続き、松原横小路や明神小路など旧通り名を記した石標も、役所の敷地内に立っている。旅館長崎荘の黄土塀の先に白い鳥居が見えてくると、あたりは唐津神社、曳山会館、市民会館が集まる一角になる。

755(天平勝宝7)年創建の唐津神社は、ちょうど三之丸の中心に鎮座している。海の神、航海の神である住吉三神が祭神で、唐津城の祈願所と定められた神社でもある。白い鳥居のそばには古拝殿が残り、手水舎には船の形をした水盤が。この唐津神社の秋季例大祭が「唐津くんち」で、張り重ねた和紙の上から漆を塗り金箔などを施した「漆の一閑張り」で製作された14台の曳山が、旧城下町を練り歩く。本殿ではそれに先駆け、氏子総代が参列して祭り期間中の安全とにぎわいを祈願する、本殿祭が行われる。

向かいの唐津曳山展示場は曳山の収蔵庫を兼ねており、一番の「赤獅子」をはじめ、鳳凰や飛龍などの縁起ある曳山、義経や謙信や信玄の兜といった武将ゆかりの曳山など、すべてが勢ぞろいする様は圧巻だ。絢爛豪華で勇猛果敢な見栄えの曳山の中で、魚組の曳山は真紅の大鯛がとぼけたような表情が目を引く。五番の「鯛」は曳山の中でも人気が高く、映像で見た巡行の様子は、ヒレを羽ばたかせて頭を上下に揺らし、まるで群衆の中を泳いでいるかのように見える。