通町筋からは市電を利用して、水前寺公園まで移動する。途中、白川を大甲橋で渡り、日本で唯一味噌にご利益がある味噌天神こと本村神社の前を通り、水前寺公園電停で下車。やや引き返して加瀬川を水前寺小橋で渡り、水前寺餅やいきなり団子など郷土の甘味が並ぶ石畳の参道を抜けて、正門から園内へと入る。正式名は水前寺成趣園で、肥後細川藩初代忠利公が清水が湧くこの地に御茶屋として作事したのが始まり。綱利公の代に大規模な作庭がなされ、桃山式の優美な回遊式庭園が完成、陶淵明の詩(帰去来辞)より成趣園と命名された。九州を代表する大名庭園で、東海道五十三次の名所が凝縮された縮景庭園でもある。

まずは正面広場から、左手の富士築山方面から琵琶湖を模した池の周囲の作庭を一望。日本橋を模した石橋を渡り左回りに進むと、鳥居の奥の参道越しに出水神社の社殿が構える。西南戦争後の街の発展のため細川藤孝公ほか3柱を斎鎮、後に歴代の藩主10柱とガラシャ夫人が合祀した、熊本の町の鎮守である。ここから見返り通り・見返り橋を渡り、名の通り池越しに来た道を振り返る。右手には築山の稜線が連なり、正面の富士築山へと続いている。

稲荷神社の鳥居のトンネルから梅林を左に見て東通りを超えると、ちょうど真裏から藤崎築山を見上げる。あたりは肥後細川家初代の藤孝、初代藩主忠利の像や、縁結びの薙、金時草とも言われる熊本の伝統野菜の水前寺菜の栽培地、出陣帰陣移徒の3つを表した細川流盆石の石庭など、見どころが集まっている。桜の広場から能楽通りへ、出水神社の春秋の大祭で神事能が奉納される能楽殿を過ぎ、右に築山を見ながら湖畔通りへ出て、池の反対側から園内を一望。中島は琵琶湖の竹生島を模しており、長い沢飛石で繋がっている。

池越しの茅葺の建物、古今伝授の間は京都御所にあった建物で、細川藤孝が八条宮智仁親王に古今和歌集の解説の奥儀を伝授したことから名がついた。水前寺成趣園の鑑賞場でももあり、琵琶湖の池と竹生島越しに富士築山を見渡す、園内一の景勝地である。これで一周となり散策は終了、市電で繁華街最寄の通町筋へと戻りましょう。