時折漁船やレジャーボート、市街側へ向かうフェリーと行き違いながら進む。正面に山頂の噴煙が大きくなり、これから歩く溶岩なぎさ遊歩道方面が平に広がるのが見えてきたら、桜島港へ接岸する。フェリーは5隻ほどが就航、サクラエンジェルなどそれぞれ愛称がつき、合わせたイラストや塗色をした船が停泊している。改札で200円を払いターミナルから出たら、溶岩なぎさ遊歩道へ向けて歩いていく。途中の月讀神社は和銅年間創建の、桜島の名前の由来とされるコノハナサクヤヒメも祀る社。 大正噴火で溶岩の下に埋没した後の昭和15年に、この移設された。高浜虚子の句碑があり、展望台からは桜島港方面と山麓へ広がる樹林が見渡せる。

溶岩なぎさ遊歩道の道中の建物には、壁面や舗道沿いや石垣に溶岩があしらわれ、JAやコンビニの外観も火山の島らしい雰囲気。桜島ビジターセンターで島の模型や土壌の灰の断層模型、噴火の映像などを見て、「おみやげ用」の灰を入れる袋をもらったら、遊歩道へと入っていく。入口すぐには足湯があり、展望台も設けられ桜島と錦江湾を眺めながらの休憩も。遊歩道は烏島展望所を結び、全長約3㎞ほど。1914年の大正噴火の溶岩原の上につくられ、日本の遊歩百選にも選ばれている。

海岸や陸側の森にゴロゴロと溶岩が転がっている様は荒涼とした眺めで、あたりを焼き尽くして海も埋め立てた猛威が偲べる。植物や生物は絶えたものの、溶岩原には徐々に植生が回復、木々の緑に鳥や虫の声も聞こえ、海沿いでは釣りをする人の姿も見られる。点在する展望所から樹林や桜島や錦江湾を眺め、桜島にゆかりのある句碑・歌碑を見ながら、30分ほどの自然と文学の散策コースである。途中で海に出られたり市街まで望めたりする場所もあり、灰が積もったところでは先程の袋に詰めていくことも。

覆い屋根の待避所や船溜まりのケイレ湾を見て進むと、車道と合流して遊歩道はおしまいに。終点の烏島展望所は大正溶岩原の高台にある展望所で、もとは沖合約500mにあった烏島だった場所。大正噴火で溶岩に呑み込まれて桜島と一体になり、今は溶岩と植物に囲まれた高台としてかつて島だったことを伝える。展望所の碑からあたりを眺めると、溶岩原に広がる樹林越しに桜島の頂が望め、当時の島の風情を偲ぶことができる。