展望台からは城山遊歩道を、東側の山麓へと降りていく。沿道はクスの大木やシダ・サンゴ樹など約600種の温帯・亜熱帯性植物が自生する自然の宝庫。大きな根を張る楠、太い幹が枝分かれするスダジイ、離島が原産らしいケラマツツジ、幹がどっしりしたタブノキなど、樹名の札があり分かりやすい。登りに比べ道は広く緩やかで、樹林の中で蒸し暑いが比較的楽に歩ける。

黎明館の屋根を見ながら進んだところで、城山の東山麓へと下り切る。付近も史跡が多く、鹿児島本線を渡った先には西南戦争で追い詰められた西郷隆盛終焉の地、やや城山方面へ入ると西郷洞窟、城山遊歩道の出口付近には1753年に徳川幕府より課せられた、尾張藩内での木曽川・揖斐川・長良川の改修「宝暦治水」で命を落とした薩摩藩士を弔う「薩摩義士碑」などが続く。北御門跡から入ったかつて鶴丸城の本丸の場所には、総合博物館の黎明館がある。

敷地内には天璋院篤姫像、当時の建築様式で復元された御楼門と瓦や鬼瓦や鯱鉾の建築技法、明治期以降に置かれた第七高等学校造士館、鹿児島大学文理学部・医学部に関連する記念碑も並ぶ。芝生の園地からは、居館の麒麟の間と能舞台の遺構が見つかっている。御楼門は明治6年の火災で焼失した後、2020年に再建、高さと幅はともにおよそ20mと、国内最大の城門である。堀はハスの花の名所で、堀沿いには鹿児島の石工文化の紹介から石垣の様々な積み方が展示されている。

隣接の鹿児島県立図書館の石垣の前には、鯉が泳ぐ水路が。さらに先は吹き抜けのエントランスホールがある鹿児島県立美術館で、黎明館も合わせてかごしま文化ゾーンと呼ばれている。その先の斜面の園地に立つ西郷隆盛像は高さ8mほど、昭和12年の完成で渋谷の「忠犬ハチ公」像の制作者・安藤照による。上野の像が有名だが、こちらは陸軍大将の制服姿で仁王立ち。明治維新の功績者ながら、職を辞し鹿児島に帰郷後に西南戦争で新政府軍に敗れ、自刃した不遇の地・城山を背景に立っているのが、少し物悲しく感じられる。