松阪市内を散歩していると、様々な松阪牛の名店が目に入る。和田金のビル、ステーキハウス三松の三角屋根の洋館、鯛屋の格子窓の町家。建物の趣に感心しつつも値段はビックリなので、あくまで街歩きの見どころとして捉えて、味わうはこちらへ。松阪牛のホルモン焼きの店としてすっかり名が知れ、多店舗展開もしている名店ではあるが、すすけた外観の場末の一杯飲み屋的な平生町店は、松阪に来るとやはり足を向けたい店である。

煙がもうもうに充満、壁や調度もすっかり燻された店内にて、カウンターに落ち着いてホクホクで臭みのない松阪牛レバーと、外がしゃっきり中とろりのホルモン落としを、七輪であぶっては食べ。追加で形が不揃いなのがご愛嬌の、松阪牛肉の切り落としも。どれも一皿600〜700円程度なのも嬉しく、ビールも込みで3000円程度で収まった。

地元の方の雑談が交わされる中、手軽につまめるのも松坂牛。前述の名店で数万円単位の上質部位を、料理人のベタ付きですき焼きやしゃぶしゃぶやステーキをいただくのも一興。幅広く懐深い味わい方ができるのが、銘柄肉の産地ゆかりの街を訪れる楽しみである。