阿智神社東参道の石段は188段。下から88段の「米寿坂」、61段の「還暦坂」と、隋神門まで33段の「厄除坂」。途中まで下り、山腹を巻いていく道から、西側へと下る小道へ。民家の間の路地のような、狭い石段をゆくと、斜面から、本町通りを見下ろせます。スロープを下っていくにつれて、瓦屋根が目線の高さに。波打つように続いています。倉敷八十八ヶ所霊場の、十一面観音の祠を折り返すと本町通り。塗屋造の町家が連なり、江戸時代の面影をとどめます。

本町通りを東へ、通りを渡った先は東町通り。本町通りから続く街道筋の一角です。沿道には豪商の屋敷や商家が集中。整った町並みが続きます。楠戸家住宅は「はしまや」の屋号の、創業明治2年の呉服店。ガス灯と軒屋根看板が目印。米蔵や炭蔵が現存します。防火のために備えた袖うだつや枠と縦格子も漆喰で造られた虫籠窓、黄土壁の数寄屋造の建物は、かつての呉服問屋。邸宅の敷地から見越しの松が、通りを見下ろします。

黒塀に沿って歩いた先には、焼板の腰壁をあしらった、なまこ壁の土蔵。沿道に配された石は、道路と敷地との境界を示すもの。中ほどで交わる通りの角には、江戸期の道標が配され、岡山、下津井、吉備津の文字。表通りはかつての街道。古くから賑わった倉敷の面影を、今もとどめる通りです。