
澤原家住宅の先を右へ、石の垣に沿った高台の細い路地を行く。斜面を横切るように住宅の間を抜ける道で、板塀の建物が続いたり奥へ猫が入り込んで行ったりと、尾道を思い出し呉も坂の街なのを実感する。抜けた先には共同玄関・廊下式の、古いアパートが懐かしい。ここを直進した朝日町は、映画であまり取り上げていない娼婦・白木リンさんとのシーンの舞台。今も町名が残り、桜並木の通りに当時の面影が残っている。ここは海軍御用達でもあり、建物が二階建ての洋館でハイソな面持ちだったそう。
通りの奥にある医師会病院は、かつては軍関係者ほか、遊郭の女性たちも検診に使っていたという。あたりに名残はほぼないが、朝日町の町名板、緩やかな坂道に続く桜並木、ところどころに見られる古い洋館建築など、名残を感じさせるところも。すずさんが砂糖を闇市へ買いにいった後に迷い込んだ通りで、医師会病院あたりは二葉館前でリンさんと談笑して別れたあたり。当地に立てばリアルな空気が伝わってくる。
朝日町の通りを直進して、再び相生橋西詰交差点へ。あたりの今西通り沿いには飲食店や食品店の古い店舗が並び、そのまま栄町商店街へと続いている。すずさんの砂糖壺エピソードの際、闇市に砂糖を買いに行くシーンの舞台である商店街で、魚屋や肉屋や惣菜屋といった普段使いの店が軒を連ね、地元の晩御飯のおかずの店として重宝されている。今でも買い物客の活気があり、古き良きローカル商店街として頑張っている。「鳥徳」の手羽先は身は詰まりスパイシーで、舞台散歩の一息にオススメだ。