椿の湯に隣接する「飛鳥の湯」は、道後温泉別館を名乗る外湯。塔屋を設けるなど飛鳥時代の建築様式を取り入れ、日本最古の温泉らしさを出している。ここから道後商店街には戻らず、椿の湯の脇から石垣沿いに登る「椿坂」を行き、高台の温泉旅館街へ。道後御湯やhakuroの間を抜け、和ガラス作品を展示し迎賓館も備えた道後ぎやまんガラス美術館あたりが、坂の頂上。あたりから道後温泉本館方面のホテル・旅館街を見下ろせる。英国風な建物の道後山の手ホテル、創業慶応4年の老舗の大和屋本店と、広い歩道を下る途中には、松山と道後温泉にちなんだ子規の句碑も点々としている。

旅館街の坂道を下ると、道後温泉本館の後ろ側から入っていく形となる。明治27年に改築した木造3階建てで、明治32年に又新殿の建築、昭和10年に改造して現在の形となった。西洋の技法を取り入れたトラス構造を用いた壮麗な三層楼で、大屋根の中央にギヤマンを使用した塔屋「振鷺閣を載せ、その上には道後温泉ゆかりの白鷺が据えられる。1階は大衆的な「神の湯」2階は少しグレードの高い「霊の湯」と「神の湯」の大広間休憩所、3階は「霊の湯」の個室で、外からも欄間の向こうにある広間や個室がうかがえる。

道後温泉本館は現在、営業をしながらの保存改修が進められ、その間は「道後REBORNプロジェクト」を展開。手塚治虫の「火の鳥」とコラボして、周囲約90mに「道後温泉本館ラッピングアート」を施し「道後REBORN×火の鳥」の歴史絵巻を描いている。天幕には覆うような火の鳥と、その下で普請する大工衆の絵が。神の湯の仮入り口には火の鳥のオブジェ、塀には神話時代から飛鳥、江戸、明治、昭和の道後温泉・本館と、時代を渡り飛ぶ火の鳥が描かれたポスターが並ぶ。まさに工事期間限定ならではの、巨大アートだ。

道後温泉本館から裏手に回り、湯神社方面へ向かう。真裏にある足湯のそばには「漱石 坊っちゃん」の碑があり、原稿用紙をあしらったデザインに直筆の「親譲りの無鉄砲で…」の書き出しがある。湯神社の石標と鳥居を目印に坂を登り、冠山にある神社に行く前に「空の散歩道」とある小道へ。道後温泉本館を見下ろす高台に足湯が設けられ、後半にかけられた工場の天幕に、屋根から壁面にかけて巨大な火の鳥が羽を広げる。工事をしている時期しか見られない、圧巻なアートである。足湯は道後商店街のアーケードから道後温泉本館、周辺や背後まで、まさに温泉街を空から散歩する眺めである。