大街道で伊予鉄の路面電車に乗り、道後温泉へ移動。昔ながらの車両は、木の床に大きなモーター音が懐かしい。大街道から道後温泉は所要12分ほどで、構内踏切を渡って駅前広場へ向かう。建物は1911年に建築された旧駅舎を復元した、明治時代の洋風建築風。駅前の留置線の坊っちゃん列車は、明治21年から伊予鉄で走っていた、地域輸送をになったSL。夏目漱石のこの作品にも出てきており、「マッチ箱のような」と形容された当時の客車も使われている。

駅前には公園「放生園」が設けられ、坊っちゃんやマドンナが登場する「坊っちゃんカラクリ時計」、道後温泉の源泉を引いた足湯がある。脇からのびる道後商店街は、温泉街のみやげ・飲食店街的な通り。約60軒の商店は明治時代に改築され、門前市的に発展してきたところから、「道後ハイカラ通り」と称して明治ロマンをコンセプトとしている。入口には坊っちゃんとマドンナの顔ハメ撮影板、レトロ鳥瞰図のような案内図「新道後温泉界隈之繪図」も。商店街は温泉旅館の客、道後温泉本館の利用客で賑わっている。

沿道には観光みやげのほか、タオルなど外湯へ行く道具を入れる竹製の湯かご、砥部焼や伊予かすり、一六タルトや坊っちゃん団子など、特産や銘菓の店も。四国八十八ヶ所巡りの「四国のみち」の道標、小川沿いの閑静な「にきたつの道」など、寄り道して歩きたい路地も楽しげ。L字に折れて道後温泉本館に向かうアーケードを抜けて直進すると、外湯の「椿の湯」の堂々たる建物が構える。道後温泉の別館にあたり、昔この地を訪れた聖徳太子が咲き誇る椿の美しさを褒め称えたという話から、この名が付いた。鉄筋のモダンな建物で本館とは違った風情を楽しめる。建物の前には、大山道と松山道の分岐の道標も立っている。