漁業縛りの市街散策の後は、宍道湖の北岸を車で走り、西岸の出雲市にある「島根県立宍道湖自然館ゴビウス」を訪れた。島根の川と宍道湖・中海の水族館とあるように、県内の河川と湖沼をテーマにした、淡水魚専門の水族館。館内には宍道湖と中海の生態系をそのまま再現した大水槽が目を惹く。宍道湖のスペックは、東西17キロ、南北6キロ。平均水深が6メートルと意外に浅く、平均塩分濃度0.3パーセントは海水の10分の1程度。中海が2分の1程度なので、同じ汽水湖でもかなり差があり、魚種および同じ魚種でも個体差を見ることができる。

興味深いのが、宍道湖七珍が相撲足腰すべて水槽に展示されていること。それぞれの特徴を展示の紹介文などからまとめて、頭に入れてから食べにいきましょう。

・スズキ→3〜12月に漁獲され旬は一般は夏だが、宍道湖のは冬が脂がのる。刺し網、延縄漁で漁獲。淡白なので様々な料理向きで、和紙に包んだ奉書焼きが名物

・手長エビ→オスはハサミが長いことから名がついた。柴漬け漁、筌などで漁獲。夏の夜にライトで照らして集め、網で掬う漁法も。七珍のモロゲエビはヨシエビのことで、長いハサミはない。唐揚げや煮付けにされる

・ウナギ→ニホンウナギは絶滅危惧種だが、宍道湖や中海には天然ものが棲息。出雲ウナギと呼ばれる、古くからの銘柄魚。石の間や穴を好み、ミミズや小魚、エビなどを餌とする大食漢。漁期は4月1日〜12月31日。寒ウナギが栄養を蓄え味が良く、筒漁や延縄、定置網、柴漬け、筌で漁獲。

・アマサギ→ワカサギのことで、光沢のある飴色をしているのでそう呼ばれる。冷水に棲息する魚で、島根は分布の南限。近年、猛暑の影響で数が激減している。漁期は10月15日〜3月31日。湖に仕掛ける定置網の「ます網漁」、刺し網で漁獲。

・シラウオ→体長10センチほどで、生きているうちは透き通っており内臓や卵が透けて見える。汽水域に全国的に棲息している。漁期は11月15日〜5月31日。ます網漁、刺し網で漁獲。天ぷらやすまし汁でいただく。

・コイ→宍道湖は塩分濃度が薄めの汽水なので、淡水魚だが棲息。10〜20キロ近い大型も見られる。冬場、2月前後の厳冬期が味が良い。刺し網、木の枝などを積み上げて囲む定置網の「おだ網」などで漁獲。調理が難しく、最近は地物がとれてもあまり食用にしない。鯉こく、洗いのほか、細切りの刺身に卵をまぶした「糸造り」が名物

・シジミ→宍道湖のものはヤマトシジミ。砂や泥など棲息環境によって、殻の色が黄色から黒まで違いがある。砂に潜る習性があり、プランクトンを餌にする。産卵で栄養がある7月の土用シジミと、1〜3月の寒シジミが味が良い