売布神社を後に、大橋川に沿って湖岸方面へと歩く。神社があるあたりは和田津見神社にゆかりがありそうな和田見町で、松江中央水産物卸売市場が設けられている。荷捌き場にはスチロール箱や青カゴが、多数積まれているのも見え、川に面して宍道湖に近い立地の水産卸売市場だ。欄干に烏帽子があしらわれた松江大橋を過ぎると、大橋川の対岸には皆実館など大型の料亭も見られる。

大橋川にかかるもっとも湖寄りの橋が、宍道湖大橋。中程には東屋が設けられ、橋の上から湖面を西方面へ広く眺められる。シジミ漁の展望所でもあり、操業日には松江しんじ湖温泉正面の湖岸に、じょれんで湖底を掻く小型の漁船が集中する風景が壮観だ。橋の周囲も漁場で、直下の橋脚付近で操業の様子を真俯瞰できることも。橋の南側のたもとには船だまりがあり、操業日ではないのでシジミ船が多数係留されていた。松江しんじ湖温泉や宍道湖大橋、南寄りに浮かぶ嫁ヶ島など、主要な漁場にかなり近い。

この付近は白潟本町、魚町、灘町などの名の町が続き、商店街や交差点、バス停に名が残っている。江戸期からある町名で、白潟本町は湖岸で浅瀬が多かったことからなど、宍道湖にゆかりのあるようだ。一畑薬師や不動明王など、あたりには石像や祠も点在しており、神仏祈願の場が多いのも湖岸に近い由縁だろう。魚町の路地へと入ってみると、事業所などが並び町名らしい面影がない中、唯一「寺津屋鮮魚」という屋号の魚屋を見かけた。陸側にある店先には「高級魚」とある行燈看板が掲げられ、料亭のように奥行きがある建屋は裏側が湖岸に面した、なかなかの大店だ。