起点は南海岸和田駅から、ひとつ和歌山市寄りの蛸地蔵駅。蛸地蔵とは最寄りの天性寺の通称で、岸和田城の一揆を地蔵尊の化身である大法師と数千ものタコが救った逸話がある。大正14年築のモダンな駅舎にはレトロなシャンデリアと、この「蛸地蔵物語」が描かれたステンドグラスがはめ込まれている。駅から続く蛸地蔵商店街は、かつて天性寺の参道として賑わった通り。公式キャラの「たこじろう」を使ったPRを展開、街灯のデザインのほか、屋号の看板にも店の特徴をアレンジして描かれている。

店舗は昭和の商店、それ以前の白壁の町家も見られ、ホーロー看板に記された屋号に年季が感じられる。料亭のまるに別館は、完全予約制の懐石料理の店。藤本食料品店の先には全体が蔦でからんだような、緑一色の長屋が目を引く。植物は藤で、花期にはファザード一面が薄紫に彩られるという。先にはアーチ窓の化粧品店、看板建築風の鳥肉専門店「鳥市」、その奥にはうだつに虫籠窓の土蔵造りの商家も。さまざまな古い時代の商店建築が、一堂に会した商店街である。