まずは南海電車の和歌山市駅からバスで15分ほど、和歌浦の散策からスタートである。万葉の歌人・山部赤人が「若の浦に 潮満ちくれば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」と詠んだ歌で、全国に知られる景勝地。もとは紀ノ川河口で、今も残る妹背山はじめ6つの島が点在していた、風光明媚な地だったという。新和歌浦バス停で下車、まずは海沿いの新和歌浦観光遊歩道を少し歩いてみた。1974年に整備された遊歩道で、和歌浦漁港から田ノ浦間の海岸沿いに続いている。

バス停から「ようこそ和歌浦へ」の歓迎看板をみて、釜揚げしらすの直売所「やぶ新」を過ぎ、小型の漁船が並ぶ和歌浦漁港の先に、観光遊歩道入口の看板がある。階段を登り細い廃灯台を下ると、磯を下り小さな白砂の浜に出る。海水が透き通るほど透明で、彩り様々な丸石も打ち寄せられている。砂の色や断層のような岩から、同じ和歌山の海岸景勝である、白浜の白良浜や三段壁のミニ版のような印象も受ける。和歌浦湾を挟んだ対岸には、海南市の下津大崎方面も臨める。

浜を渡った先の白亜のホテル「エピカリス」は、老舗旅館を改装した欧風のホテルで、この一角だけが地中海のようなイメージ。あたりには地層が斜めに傾いている断崖も見られ、隆起など地形の変動が大きかったことが窺える。やや先に見えてきた蓬莱岩は、中国にある不老不死の地とされる名山の名をとった景勝。中央に穴が空いた奇観は、地元ではパワスポとしても知られるとか。どっしりした佇まいは獅子のようにも見え、海に向け咆哮する力強さを感じる。