酒田を訪れたら必ず見てほしい民芸が、傘福。傘に布人形などがつるされたつるし飾りの一つで、観音信仰の奉納品とか上方や京から伝来したものとか、起源には諸説ある。お祝いのときはそれぞれの意味あいの飾り物を傘先に下げ、幸せを願った風習。豊漁や豊作を祈願したものともいわれ、伊豆や柳川の吊るし雛とは、性格が異なるものなのだそうだ。

山王くらぶの2階の大広間は「傘福の間」とされ、地元の愛好会で作られた傘福などがずらり並び、実に華やか。吊るされるのはすべて所以のある縁起物で、七福神関係の道具や野菜、果物など。「三角」という薬袋をいちばん下に吊るすこと、傘に天蓋がつくことが、酒田の特徴といわれている。鯛や鞠や鼓に鈴、ウサギや金魚や桃や唐辛子など、個々に見てもかわいらしい。

節句人形のように、時期を決めて飾らず通年観られるのも、酒田のさんぽを彩るアイテムとしてありがたい。