こちらは駅に近い有名店で、鳥取の食材を使った郷土料理を民藝のうつわで出すお店。蔵造りの外観、店内は温かい灯りの中の民藝調でジャズが流れ、照明や家具や建具も民芸品。民藝骨董の器が飾られ、まるで民芸館のようだ。

イワシの南蛮漬けがお通しで、マイワシの身がたっぷりで骨太。鳥取牛すじ煮込みはあっさり炊いてあり、素材を引き出した味加減。コラーゲンがまんま効いてくるようで、砂丘横断の足の疲れに嬉しい。甘酢らっきょうは鳥取名物の砂丘らっきょうで、でかくたっぷり。シャキシャキでなくホッコリしており、甘酢が効いてこれも疲労回復系だ。ビールの後に合わせた鳥取の芋焼酎「なまけものになりなさい」は、刺激が強く怠けられない?

メインのハヤシライスはマイルドな和のテイスト、ソースの味が複雑で味に膨らみがある。鳥取和牛がほぐれ、角が取れたトマトの酸味とマッチ。福神漬けがおいしく、一緒に食べると発酵香が膨らむ。店はもとはしゃぶしゃぶ店で、切れ端の肉でハヤシライスを始めたそう。締めのフルーツは梨で「新甘泉」という新しい品種。赤梨と交配しており、身が締まり甘みがある。

店の雰囲気、料理もさることながら、こちらの特徴は器も素晴らしいこと。牛すじが盛られた白地に淡い青の染付けは、有田の大日窯。らっきょうの緑と黒のコントラストが鮮やかな小鉢は、鳥取の牛ノ戸焼の染付け。ハヤシの皿は山根窯で、市内の主な窯の陶器は揃えているそうだ。ビアグラスと焼酎のグラスは、素朴な風合いにそれぞれブルー・茶の輪がコントラストで、日本海の海と砂丘がイメージ…と思ったら沖縄ガラスだったという。

ガイドブックや旅行口コミサイトにも載る定番店だが、行く価値ありの鳥取の名店である。