猿沢池の南側は、奈良盆地を縦断して桜井へ向かう古道「上ツ道(上街道)」の起点となっている。街道はさらに伊勢神宮に至る「伊勢街道」でもあり、この先奈良町の真ん中も貫いている。常夜灯の先に石橋が架かり、下には市街を横断する率川(いさかわ)」の流れ、その小さな中洲の舟型に「率川地蔵尊」と称される石仏群がある。周囲で見つかった石仏を一か所にまとめた珍しいもので、橋から見下ろして参拝、ちゃんと欄干に賽銭箱もあった。

すぐ先を折れるともちいどの商店街方面へ至る、町家が続く風情ある裏道だ。黄色い土塀に竹矢来の民家、すだれに急須型の風鈴が涼しげな茶の吉田園、千本格子が綺麗な中川正七商店直営店などしゃれた雑貨の店も。どこも店構えが控えめで、景観を損なわないようにしている。

もちいどの商店街を越え、椿井町に入ると一気にローカルな街並みとなり、黄土塀にうだつにベンガラ格子の南インドカレー店、町屋の前を植物で埋め尽くしたカフェ、途中で切られたっぽく妙に間口が狭い町屋、それに繋がるような花屋のビルなど、生活感ある店構えがそれまでの観光客向けと違う親しみやすさがある。

先の路地に長い黄土塀が続き、通り沿いに屋号と「墨」と一文字書かれた看板が格式ある、創業1577年の奈良墨「古梅園」を過ぎると、自分好みのマーケットを見つけた。寄ってみましょう。