最後は称念寺から御堂筋を西へ向かう。「紙屋」の屋号で肥料・綿・油を扱い金融業も営んだ豪商・豊田家の町家と、骨董美術品を収蔵した記念館を過ぎ、右へ折れると左に白壁沿いの路地がかなり長く続く。左側はずっと今西家の屋敷で、路地を抜け左に回り込んだところに玄関が、さらに進み復元された環濠を渡り西口門跡から振り返ると、入母屋造りの二重破風が城郭を思わせる外観が、掘越しにそびえるのが望めた。

今西家は大坂夏の陣の際に街を守った功績から、「今井の西の家」より家名がついたとされる。今井町の惣年寄筆頭をつとめた名家で、八つ棟造りとよばれる複雑な形状の屋根、司法権を持っていたため邸内にある白州、日本最古と言われる帳台構えなど、日本の町家建築史上貴重な造りが多数残る。見学は申込制のため外観を眺めるにとどまるが、掘越しの眺めだけでもその豪壮さは充分感じられた。

付近の環濠は、かつて今井町の周囲を巡っていたものを一部復元してある。幅は11mほど、自営のほか町内からの排水や遊水池としても使われ、この今井西環濠広場付近が土塁や西口門への橋などの雰囲気が、当時を伝えている。これで町内散策は、ほぼ終了。本町筋を引き返し、北尊坊通りに出て蘇武橋の出口へ向かいましょう。