最初に拝見した「舞台芸術見本市」は、「生笑(いきわら)一座」のステージを観覧した。北九州市にあるNPO法人「抱樸」の活動の一環で、全員がホームレスの経験者である座員がその経験や「死のう」と思った極限から自立した経緯を語る事で、観覧者に生きることを問いかけるという内容である。座長でありNPO法人理事長が座員ひとりひとりとやりとりする形式で、ややすれば重いテーマを硬軟取り混ぜて入りやすく進行された。

最初の方はホームレス生活をわかりやすく紹介、集めた食品は割ってみて糸を引くかが食べられるかの見極めとか、海を風呂がわりにするが塩のベタつきなど気にしないとか、実用的?な情報に会場は盛り上がった。興味深かったのは現金を得るアルミ缶集めで、当初週8000円だったのが最盛期は14000円ほど、のちに全く集まらなくなったという。アルミ相場の高騰は北京五輪の影響、缶が集まらなくなったのはリーマンショックの失業者が同業となったせいともいわれる。ホームレスの生活も世界や社会とつながっている、との言葉が何とも深い。

次の方は酒で身を崩し、ホームレスを10年経験したという。アルコール依存症のため野宿時代も飲んでおり、見かねた近所の方が差し入れたお金も焼酎を買って飲んでしまったほど。NPOから自立支援でアパート入りを勧められたが、当時飼っていた愛犬の処分が条件のため拒否した話も挙がった。飼い犬が死んでから入居した際は「飼い犬の死が背中を押した、入るように勧めてくれた」とも。またアパートに入居して以来、酒は飲んでないのだそう。体を心配する周りの方に従っているからで、アルコール依存症に効くのは人の言葉、との話が重い。

ほかにも長年のホームレス生活に行き詰まり、救いを求め助けてもらった方は「助けてと言えた日が助かった日」との感謝の念を話し、童謡「シャボン玉」を歌った方は歌詞が生まれてすぐ亡くなった野口雨情の娘を歌ったことを語り、死は誰かが悲しむ、生きていれば笑えると話した。困ったときに「助けて」と声を上げることが大切、そして生きてさえいれば笑える、との、一座名の由縁たる座長の締め。まずは生きていくのを選ぶことの大切さを、彼らの話とともにしっかり胸の内に刻み込んでおきたい。