西巣鴨訪問は、写真展が目的。「生命縦断」と題し、フランス料理のグランシェフ・リオネルベカが、料理人の視点から命の美しさ、複雑な構造を捉えた企画展である。料理人は生命を食材に変え、新たな生命へと継承させる者で、厨房はその神聖なる場。その境界を見出さんとした画はまさに「食べる」ことの本質を訴えてくる。中央に配されたモニター映像では外された鳥足、血抜き中のスッポン、包丁のアップときて、湯気が立ち込める中に一閃の光が射す先に佇む料理人の姿が、まるで儀式の執行者の如く見えてしまう。

写真展示の序盤は同じ絵柄をカラーとモノクロで並べられ、経過による対比がより迫ってくる。ニンジンなど根野菜は抜かれ洗われることで、生命が絶える。ニンニクやタケノコは皮を剥かればらされるに連れ、活きと潤いを失っていく。さらにおろされ水にさらされた多数の鯛の頭、孵れず未熟な命の集まりとなったウズラの卵の箱詰め。生命の中枢である頭や、源となる卵は、そうした目線で見るとなお重い。下処理された豚の面皮や、羽を毟られる前と後の鴨はさしづめ、命あった際の表面的なもののみ外し去った姿だろうか。

そんな中でいちばんインパクトがあったのは、首から上はそのまま、下は処理された鶏の写真。まさに「食材と生命の間」を見せつけられたようで、「いただきます」すなわち他の命をいただいて、自分が生かされていることを実感する画だった。いつもは背景とか食味とかばかり見ているが、たまにはこのように食の根源について捉えて考えることも、仕事柄大切と思えるひと時だった。

さて、夜はさばきたて新鮮なモツ焼きで一杯いきましょうか(こらこら)。